値上げラッシュまだまだ続く…庶民を苦しめる“無間地獄”「計画性と巧妙化」のカラクリ

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 家計への圧迫感が強まっている。厚労省が9日発表した今年3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価上昇を加味した実質賃金は前年同月比2.9%減少。12カ月連続のマイナスだった。

■賃上げは物価高に追いつかず

 新型コロナ禍からの経済活動の再開によって現金給与総額(名目賃金)が増加した一方、賃金の伸びは足元の物価上昇に追いついていないのが実態だ。30年ぶりの高水準となった春闘の賃上げの動きを念頭に、加藤厚労相は「物価高に負けない継続的な賃上げを実現していく」と意気込んだが、これから先も食品を中心に値上げラッシュは止まりそうにない。

 帝国データバンク(TDB)の調査によると、食品は今秋までに年内3万品目が値上げされる見通し。昨年、2万5768品目(累計)が値上げされたのに対し、すでに今年は累計2万1205品目に達している(4月28日時点)。まだ春だというのに、昨年1~8月の値上げ品目数を超えており、今年は昨年に比べ、食品だけで1世帯あたり2万6000円の負担増が見込まれるという。

 値上げラッシュは食品に限らない。日経新聞が食品・飲料・日用品など消費財メーカー338社を対象に、値上げに関するアンケート調査を実施したところ、3月上旬から4月中旬までに回答した93社のうち7割が今後1年間に値上げする方針を示した。

 気になるのは、値上げの“スタイル”の変化だ。TDB情報統括部の飯島大介氏がこう言う。

「昨年は原材料高や原油高、急激に進んだ円安の影響で、企業側が食品の『緊急値上げ』に踏み切った結果、特定の月に値上げが集中しました。消費者にとっては食品値上げを実感しやすかったとも言えますが、今年は各月に値上げが分散する『計画的値上げ』が特徴的です。毎月、何かしら値上げされ徐々に家計の首が絞まっているのに、細かく家計をチェックしていないと、なかなか値上げの規模を実感しづらくなっています。企業も消費者も、いわば“値上げ慣れ”してしまっているのです」

 企業が値上げを発表してから実施するまで「2カ月以上」の日数を要する割合は昨年77.8%に対し、今年は81.3%に増加。値上げ実施までの期間を置く「計画性」を企業が重視していることがうかがえる。

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