日本酒造組合中央会理事・宇都宮仁氏「日本の酒造りは日本人が伝えていかなければならない文化」

公開日: 更新日:

初めての芋焼酎に「オレンジピールの香りがする」

 ──注目されるようになった理由は?

 私たちが地道にやってきた活動がようやく芽が出てきたというところでしょうか。例えば世界のトップバーテンダーやミクソロジスト(果物や野菜、ハーブなどを使用しオリジナルカクテルを創作する作り手)の招聘です。彼らが蔵を巡って焼酎造りを目の当たりにし、造り手のポリシーを聞き味わってみることで、きちんと管理されて造りこまれた、原料の風味が感じられる素晴らしい酒だとわかってくれた。専門家同士は用語が近い。こちらが感じていることは向こうも感じとってくれる。私がポーランドで焼酎の紹介をした時のことですが、彼らは芋焼酎が初めてにもかかわらず、すぐに「オレンジピールの香りがする」と反応してくれました。

 ──海外で焼酎のコンテストやカクテルコンテストも開いているそうですね。

 焼酎部門を設けた蒸留酒のコンテストはかなり前からありますが、そこで受賞しても、焼酎の海外での認知度は上がりません。そもそも知られてなければ受賞したから手に取ってもらえるということはないのです。

 私たちが主催するカクテルコンペティションはアメリカで2回、イギリスで3回開いており、今年はフランスでも開催します。参加者には、焼酎の蔵巡りをしてファンになったバーテンダーによるセミナーを事前に受講して試飲してもらい、焼酎の特徴を知ってもらった上で、カクテルレシピを作ってもらうようにしています。

 ──最近、ニューヨーク州やカリフォルニア州で「SHOCHU」としてレストランで販売できるようになったと聞きました。

 2022年にニューヨーク州、23年にカリフォルニア州のアルコール飲料管理法が改正されたのです。アメリカではワインやビールなどのソフトリカーライセンスと、蒸留酒のライセンスが異なり、ソフトリカーライセンスしかないレストランでは蒸留酒は扱えません。

 ただし、「SOJU」(韓国焼酎)はアルコール度数24%以下であれば特例としてレストランでの販売が認められていました。それぞれの文化を尊重する形で24%以下の焼酎は「SHOCHU」として同じように提供できるようにしてほしいとロビー活動を行い、法改正へとつながりました。これがきっかけとなり「日本にはSHOCHUという蒸留酒がある」と報道されるようになり、その結果、注目度が少しずつ上がってきたとも見ています。

 ──まずは存在を知ってもらうことが重要?

 アルコールは世界どの国においても規制が厳しい。焼酎を流通させたいから一方的に輸出して小売店に置くというわけにはいかないのです。受け入れる側から「焼酎という酒が欲しい」というニーズがあって初めて輸出ができる。

 焼酎は原料がさまざまで、それらの原料によってさまざまな味わいのものが出ていますが、どういった焼酎が好まれるか以前に、まずは焼酎というブランドを確立させなくてはなりません。今、世界的にワインの出荷が減少し、蒸留酒への関心が高まっています。蒸留酒のマーケットは常に新しいものを探しています。焼酎を使って自分の店だけのオリジナルカクテルにしようと考えているバーテンダーやミクソロジストはかなりいます。

 ──課題は?

 空港の免税店に焼酎を置いていますが、値段が安く、高級日本酒やウイスキーのように「高いけどかっこいい」というものがない。お土産で買うなら、見た目にこだわり、ある程度の値段のものでないと。バーに並べるにしてもそうです。特徴的なラベルであり、唯一無二のボトルデザインだからこそ、バーシーンに映える。焼酎のメーカーはこれまで地元の消費者に向け、いかにおいしいものを安く提供するかを考えてきた。海外で販売するとなると、マーケットに合わせてその意識を変えなくてはなりません。

 ──焼酎カクテルが話題ですね。

 日本ホテルバーメンズ協会と協力し、焼酎のフレーバーを感じられるベーシックカクテルを考案中です。海外での蒸留酒の飲み方は、食中ではなく、食前か食後。それなら焼酎のベーシックカクテルを作れないか。マティーニやネグローニのようなカクテルを焼酎で作ってみるなどですね。焼酎はポテンシャルの塊ですよ。

 (聞き手=和田真知子/日刊ゲンダイ)

※本格焼酎とは、米などから麹(こうじ)を作り、米、麦、芋、黒糖などの原料を入れて発酵させ、出来上がったもろみを単式蒸留機で蒸留して造った焼酎。酎ハイやサワーのベースによく使われる甲類焼酎とは異なる。本文の焼酎は全て本格焼酎のこと。

▽宇都宮仁(うつのみや・ひとし) 1959年3月17日生まれ。京都府立大学大学院農学研究科修了。83年国税庁入庁。国税局、独立行政法人酒類総合研究所も経験。2018年退職。19年から現職。海外業務、広報、焼酎事業、清酒技術を担当。「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」の副会長。著書に「最先端の日本酒ペアリング」(共著)、「うまい酒の科学」(部分)など。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    (1)東京・杉並区を流れる善福寺川周辺にも、「アサ」「ツル」「カマ」は湿地、「エコ」は川の入江を示す水害地名

  2. 2

    これは「多死社会を先取りした街」の姿だ! 「地域全体が老人ホーム」になったドヤ街「山谷」で、オヤジさんたちがカラオケを楽しむ居酒屋に突撃してみた

  3. 3

    荻窪「銭湯GOKURAKUYA」銭湯では珍しいセルフロウリュにウキウキ

  4. 4

    「あの人、もったいなかった…」ではもう遅い! 婚活男性を次々断る“ポイポイ婚活”女性の落とし穴

  5. 5

    9月も漁獲量8割減…歴史的不漁で1匹400円のサンマに続き秋サケ・サバも全滅危機

  1. 6

    (2)「丸子「野毛」「等々力」など東京と神奈川で同じ地名 多摩川の氾濫で分断された水害の痕跡

  2. 7

    ドヤ街「山谷」の憩いの場・玉姫公園で見た異様な光景 「倒れている人がいるのが当たり前」という“異世界”を目の当たりに

  3. 8

    男女平等「世界117位」の日本、古代は先進国だった? 16代の天皇のうち8代が女性だった「女帝の時代」

  4. 9

    (4)大阪「梅田」は埋立地を示唆 東日本大震災で液状化した関東3エリアに共通する地名「日の出」が偶然でない理由

  5. 10

    (3)東京・港区愛宕の「アタ」も横浜・野毛の「ノゲ」も崖地 首都圏沿線の「丘」「台」は崩壊地名の可能性

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    萩本欽一〈47〉気仙沼ちゃんは民宿4軒経営の大女将に 説教してテレビで夫を募集させた甲斐があった

  2. 2

    阿部慎之助にした「今ならパワハラで即クビ」の指導&落合博満から学んだ仰天トレーニング

  3. 3

    モグライダーともしげが埼玉の中高一貫ミッションスクール聖望学園で打ち込んだアメフト《26年夏番外編》

  4. 4

    千葉秋季大会開幕も専大松戸が「来春センバツを狙う」と宣言できない切実なチーム事情

  5. 5

    萩本欽一〈46〉斉藤清六が泣きながら持ってきた1000万円、追い返そうと思って貯金額を聞いたら驚いた

  1. 6

    広島4番栗原に敵将・落合監督は「四球でいい」と助言を…

  2. 7

    timelesz猪俣周杜「傷害容疑で逮捕」に“ダブルでガッカリ“…ファンの計り知れない失望

  3. 8

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  4. 9

    萩本欽一〈45〉斉藤清六を全国区にした誰も知らない裏話 “弟子入りNG”から評価を一転させたんです

  5. 10

    4度結婚した宇野千代の“不倫”をNHK朝ドラ「ブラッサム」はどう描く?「カーネーション」は真正面から