ドラマ『ひとりでしにたい』未婚・子なしは悪なのか? 独女が“人生の選択肢”を考えた結果、決めたこと
【アラフィフ独女のひとりごと】
アラフィフ独女ライターのmirae.です。50代になり、「老後」や「終活」といった言葉が、少しずつ現実味を帯びてきました。そんな折に出会ったのが、NHKのドラマ『ひとりでしにたい』。結婚していないこと、子どもがいないことが、あたかも“人生の失敗”のように扱われてしまう空気に、一石を投じてくれる作品です。
ひとりで生きることは、本当に悪いことなのでしょうか?このドラマを通じて、私自身の経験と重ねながら考えてみたいと思います。
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ドラマ『ひとりでしにたい』——ひとりで生きる意味を問う物語
2025年6月、NHKでスタートした土曜ドラマ『ひとりでしにたい』は、原作・カレー沢薫さん、主演・綾瀬はるかさんによる“終活ヒューマンドラマ”。タイトルのインパクトもさることながら、内容は実にリアルで切実です。
主人公・山口鳴海(綾瀬はるか)は、未婚・子なしのアラフォー。仕事に趣味に推し活にと、独身生活を謳歌していました。
ところがある日、子どもの頃から憧れていた、未婚・子なしのキャリアウーマンの伯母が、誰にも看取られずに孤独死していたことを知ります。
その死をめぐって父・山口和夫(國村隼)は、「子どもも産まず、好き勝手に生きてきたから、最後に罰が当たったんだ」と語ります。その一言が、鳴海の心を大きく揺さぶるのです。
「私もこのままでは、伯母のように“罰が当たった”と見なされてしまうの?」という恐怖から、鳴海は焦って婚活を始めます。しかし、現実は厳しく、なかなか結果にはつながりません。
そんな中、同僚のエリート公務員・那須田優弥(佐野勇斗)から「結婚すれば安心って、昭和の発想ですよね?」とバッサリ。しかし年下の彼に軽くあしらわれたことで、鳴海は方向転換を決意します。
「だったら私は、ひとりで生きて、ひとりで、しにたい」
そう決意した彼女は、人生の“終活”に目を向けはじめるのです。
「罰が当たった」と言われた怒り。現実でも耳にする声
「子どもも産まず、好き勝手に生きてきたから、最期に罰が当たったんだ」
鳴海の父が伯母の死に対して放ったこの言葉は、あまりにも無神経で、胸に突き刺さりました。ドラマの中のセリフではありますが、私たち未婚・子なしの女性にとっては、現実でも何度となく耳にしてきたような偏見の声です。
未婚子なしは“悪”なのか?
“結婚して子どもを持つ人生”が当然で、それ以外はわがままで、どこか歪んだもの。そんな価値観はいまだに社会の中に根強く残っています。
私は50代で独身、子どももいません。でも、鳴海と同じように推しを愛し、日々を楽しみながら自立して生活しています。
仕事をして、税金も年金も納め、社会の一員として生きているつもりです。なのに、「家庭を持っていない」「未婚で子どもがいない」だけで、“欠けた人生”のように見なされるのは、いつも納得がいきません。
いったい、結婚や出産は“免罪符”なのでしょうか? それを持たない人生は、罰せられるべきものなのでしょうか?
好きなことにときめきを感じ、自分なりに誠実に生きている。その生き方を、誰にも否定されたくない。
そんな気持ちが、ドラマの鳴海の姿と重なり、私自身も心の底から共感していました。
終活は「よりよく死ぬ」ための「よりよく生きる」手段
後輩の那須田の一言で婚活を辞めた鳴海は、方向転換して“終活”に向き合いはじめます。とはいえ、彼女の選んだ終活は決してネガティブなものではありません。
むしろ、人生の最後にどう在りたいかを考えることで、いまをどう生きるかが明確になる。そんな“前向きな終活”のあり方を見せてくれます。
「誰かと無理して結婚して、なんとなく安心を得るよりも、自分らしく生きて、自分らしく人生を締めくくる準備をする方が、よっぽど自然なんじゃないか」
そう決意する鳴海の姿に、私はとても励まされました。
恋愛や結婚だけが“豊かな人生”の証ではない。推しのライブに行くときめきも、静かな部屋で好きな作品を観る時間も、誰かを無理に選ばずとも十分に価値があるのだと、気づくことができました。
ひとりで生きることを選ぶのは、逃げではなく、立派な選択。寂しさや不安と向き合いながらも、“自分らしい人生を築いていくため”の、覚悟の証なのだと思います。
“ひとりで生きる”は、“自分の人生を生きる”ということ
ドラマ『ひとりでしにたい』は、結婚や子どもだけが幸せの基準ではないこと、そして「どう死ぬか」を考えることは、「どう生きたいか」を見つけることにもつながるというメッセージを届けてくれました。
ひとりでいることは、何も悪いことではありません。自由で、責任があり、自分で自分の人生を舵取りするという、強さと優しさの両方が求められる生き方です。
誰かと一緒でもいいし、ひとりでもいい。どちらを選ぶかは、他人の価値観ではなく、自分の意志で決めていくものです。
私も、ひとりで生きることを恐れずに、自分らしく、しなやかに、これからの人生を歩んでいきたいと思います。
(mirae.(みれ)/ライター)