断捨離、終活…「モノを持たない」って本当に幸せなのか? 65歳童貞が提唱する“ミニマリスト”と真逆の生き方

公開日: 更新日:
コクハク

若者がいろいろと消費をしなくなった

 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(65)。多忙な現役時代を経て、56歳の時に仕事中心で働く生き方をドロップアウト。現在は悠々自適な老後(?)を送りながら、還暦過ぎの童貞としてメディアに登場して注目を集めています。

【山口明の童貞日和】

 Hello、本日も童貞なり。

 お酒は飲まないし、運転免許も持っていないオレは若い頃、男性からは「酒が飲めないやつは男じゃねぇ!」とののしられ、女性からは「男はクルマを持ってて一人前」と蔑まれたものだよ。

 これって現代のジェンダー論的な基準でいえば完全にNGじゃない? でも、酒もクルマも無縁な人間が珍しがられたのも過去の話。最近の若者にとっては、いたって普通のことになっている。

 若者の「酒離れ」や「クルマ離れ」が叫ばれるようになって久しいけど、「タバコ離れ」に「ファッション離れ」、そして「旅行離れ」に「ギャンブル離れ」と、さまざまなことから若者が“離れている”らしい。

 これってシンプルに若い世代が「あまり消費をしなくなった」ということだよね。

【読まれています】「コーヒー1杯も買えない!」キャッシュレス化に乗り切れない、現金派の叫び

 そもそも、現代社会は十分過ぎるほどのモノで溢れているし、多くの人はすでに毎日を生きていくのに最低限必要なモノをだいたい持っている。

 だから、今さら新しい家電やファッションアイテムなんかを、高いお金を出して買ったところで、日々の生活や人生が劇的に変化するなんてことは望めない。

 わざわざ本やDVDを買わなくても、ネット上には一生かけても見切れないような大量のコンテンツが存在しているわけだし。

脱成長経済で幸せになれるのか

 そうやって人々が消費をしなくなると、当然のように経済は停滞するわけで、その結果、バブル崩壊以来の長い景気の低迷が続いている。

「大量生産、大量消費の時代は終わった」とか「経済第一のアメリカ的な資本主義ではなく、ヨーロッパ的な成熱した社会を目指すべき」なんて意見をよく耳にするようになったけど、オレは思うんだよ。成長することを否定した脱成長経済で本当に人間は幸せになれるのかって。

「経済の成長を止める」ということは、新しい商品やサービスを生産しなくてもいい、と言っているようなもの。裏を返せば、人間の向上心や創造性を歓迎しない社会に向かっているとも言える。

 そんなふうに、人間の欲望や上昇志向を良しとせず、強引に止めてしまうような社会の中で、生きる活力やエネルギーを保ち続けるのは難しいよ。

 経済を縮小して、低空飛行で細く長くという社会を目指しているのかもしれないけど、このままではやがて衰退して崩壊してしまうんじゃないのかな。

モノを持たないことが美徳?

 最低限のモノしか持たないミニマリストと呼ばれる人たちがいる。「断捨離」とか「終活」なんてワードが注目されているように、今や“モノを持たないこと”が美徳という風潮だよね。

 そんな世の中の動きに逆行するかのように、多くのモノに囲まれて生きているのが、このオレなんだよ。

 大量の本と雑誌、CDとDVDそして服と、他人から見ればガラクタのようなモノが家中にあふれたゴミ屋敷のような家で暮らしているんだけど、傍から見たらゴミみたいなモノも、オレにとっては大切なインスピレーションの源。

 あなたが読んでいるこの記事のアイディアも、カオスのような環境で生まれたんだよ? 混沌として、多様化して、複雑化したこの世界で生きるのに「ライフスタイルだけはシンプル」ってどうなのかな~。個人的にはあまりいいとは思えない。

 スティーブ・ジョブスは、ファイルの山に囲まれた散らかった環境で洗練された数々の商品を生み出した。アインシュタインだって大量の書類が数らかった部屋で相対性理論を思考したし、多くの文豪やアーティストは整理整頓されていない“散らかった仕事場”で偉業を成し遂げた。

 つまり、創造的な人生を送るのであれば、必ずしも整然とした環境で生活することが徳策ではないってことだよ。

 消費するかしないかや、所有するモノの多い少ないに関わらず、どうすれば人は幸福な人生を送れるのか。学者や政治家の人たちにも真剣に考えてみてほしいなぁ。

 それではBye Bye、次回も夜露死苦!!

【アキラのオマコラ(オマケコラム)】

 モノを捨てられない性分だから、断捨離なんて絶対に無理なんだけど、年を取るとも人間関係の断捨離は順調に進行中。わかりやすく説明すると、年を取ったら友達がいなくなった、ってことだね(苦笑)。

 そんな話をすると「寂しくないですか?」なんて聞かれるけど…これがスッキリ! そして絶好調!? 考えてみたら、人間の悩みってだいたい人問関係が原因だったりするから、処分すべきはモノじゃなくて人間関係なのかもよ? 童貞戦線、本日も異状なし。

(山口明/プロ童貞・現代アーティスト)

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態