「永遠猫の祝福」清水晴木著

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「永遠猫の祝福」清水晴木著

 中学3年生の景奈は、ある日、些細な出来事が原因で、クラスの女子たちから無視をされるようになった。だが景奈は、そんな軋轢に関わってる余裕はない。なぜなら、人間の言葉をしゃべるマーブル模様の猫と出会ってしまったからだ。

 その猫、400年生きているというエルは、景奈が事故に遭いそうになったのを助け、以来、景奈の部屋に姿を見せるようになる。やがて景奈は、2年前に父親が海で溺れた子どもを助け死んでしまったこと、母親が気に病んで自分との関係もうまくいってないこと、そんな家のすべてをエルに話した。エルと語り合っているうちに「生きざま」という言葉が胸に響く。

 本書は老いもせず病に倒れることもなく400年生き続ける猫エルが、悩みを抱える人々の「生と死」に寄り添い、彼らの心を癒やしていくファンタジー。

 仕事がうまく行かず、樹海を訪れたアラサー会社員、父を看取ることができず悔やみ続ける豆腐屋の跡継ぎ男性など、春、夏、秋と巡る季節を舞台にエルと彼らの物語は展開する。最終章の「冬」は、エルと余命いくばくもない女性との切なくも優しい約束を描いた一編で、冒頭の景奈の物語へとつながっていく。エルとの対話を通じて、生きる意味を見いだし再スタートを切る彼ら、読者への応援歌だ。

(実業之日本社 1870円)

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