「大江戸釣客伝」夢枕獏著
「大江戸釣客伝」夢枕獏著
庶民文化が花開いた江戸元禄時代。主人公は日本最古といわれる釣り指南書「何羨録」を世に出した津軽采女。
無役の旗本小普請組の采女は、退屈な日々を趣味の釣りで憂さ晴らしする毎日。
ある月夜のこと、采女は大川端に舟を浮かべてスズキ釣り。
が、大物に引き込まれて川に転落。これを助けたのが、近くで釣っていた松尾芭蕉の高弟・宝井其角と後に英一蝶として世に出る絵師の多賀朝湖だった。
物語はこの3人の釣りキチを中心に展開していく。
ハゼ釣り名人の阿久沢弥太夫、謎の老釣り師・投竿翁、豪商・紀伊国屋文左衛門、第5代将軍綱吉、忠臣蔵の吉良上野介、水戸の殿様・水戸光圀ら当時の各界の粋人・奇人・悪漢たちが入り乱れ、波瀾万丈の元禄釣り絵巻となる。
釣りという道楽に命を懸け、無鉄砲に生き抜いた江戸の釣りキチたちの夢の跡が、読後にすがすがしい余韻を残す。
(講談社文庫)



















