国立大学病院の7割が赤字経営で債務超過のケースも…一方で広島大学病院が黒字経営の理由

公開日: 更新日:

全国の大学病院のマネジメント能力を高める必要性

 文部科学省も、すべての国立大学病院を対象にした経営改革モデル計画を提示している。

 それを受けて新潟大学医歯学総合病院は、そのモデルプランを上回る充実した多角的な改革プランを提示している。かなり意欲的だ。さらに注目すべきは広島大学病院。国立大学病院の中でトップクラスの黒字経営を維持しているが、さらに経営分析を進め、客観的に問題点を洗い出し、積極的に改善しているからだ。

 たとえば目的積立金をうまく活用して、借入金を減らし、債務償還経費も毎年減額している。同時に稼働率や在院日数、新規入院患者数などのデータを活用して、収益率の向上を図っている。そうした経営分析を踏まえた対策が効を奏したといえるだろう。

 今年8月には、神戸大学と熊本大学と連携する「広島・神戸・熊本 医療革新・研究共同推進イニシアチブ」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の「医学系研究支援プログラム」事業に選ばれた。中四国では広島大学が唯一の代表機関で、3大学それぞれの強みである「がん感染症」「神経・免疫運動器」「代謝・循環」の分野で、研究者が協働する。本年度から3年間で総額約14億円が支援される。外部資金獲得の有力な手段となるであろう。さらに海外大学・医療機関への技術指導などの教育プログラムを提供することによる外部資金の獲得を考えている。

 ほとんどの国立大学病院は地域医療と同時に最先端医療を実現する使命を担っており、それを実現するには、外部資金獲得も含めた病院経営のマネジメント力が必要になっている。

 このようなマネジメント力向上の多くの成功モデルをベースに、ほかの国立大学病院ともお互いに情報を共有すべきであろう。

(木村誠/教育ジャーナリスト)

  ◇  ◇  ◇

 帰国子女の親ガチャ問題や入学金の二重払いなど、●関連記事では著者が大学にまつわる疑問を解説しています。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み