国立大学病院の7割が赤字経営で債務超過のケースも…一方で広島大学病院が黒字経営の理由
物価高や人件費上昇などを背景に、多くの国立大学病院の経営状態が危機的な状況に陥っている。国立大学は全国85校の約半数42校に附属病院があり、その2024度決算をみると、全体の約7割の国立大学病院が赤字経営で総額285億円の赤字で過去最大だ。25年度の赤字額見込み額は400億円を超える可能性が高い。
国立大学病院収支報告状況における支出増加の要因をみると、病院の現状がうかがえる。人件費の増加が支出増要因のトップとなっていて、24年の5460億円から25年は5785億円と325億円(約6%)アップしている。働き方改革で医師などの必要な要員が増え、人件費が増加しているのである。国立大学病院では長期休業の医師数が増える傾向にあると報告された。企業なら人的コスト増は商品価格に転嫁することができるが、診療報酬制度が適用される病院ではそうはいかない。
また高額医薬品や診療材料の使用による医療費増も、国立大学病院の大きな赤字要因となっている。国立大学病院では、手術支援ロボットなど最先端医療に対応した高額な医療機器を導入している。これらは海外製も多く、最近の円安の影響で購入費だけでなく、保守維持費が急騰しているのだ。そのような医療費に関するコスト増は、診療報酬が微増の現状では、なかなか吸収できていない。
このままではさらなる大幅な赤字決算となり、債務超過に陥ると見込まれている国立大学病院もある。特に、急性期の総合病院であるほとんどの国立大学病院では、入院患者の医療費を「DPC制度(DPC/PDPS)」で算定している。このDPC制度では、入院治療を標準化し、「病名」と「在院日数」に応じて診療報酬を決定する。DPCコードは病名や手術・処置の有無、副傷病などで分類され、それに基づき1日あたりの定額報酬が設定される。
そのため、投薬の量や検査の回数にかかわらず一日当たりの入院費が一定のため、薬剤をはじめとした医療用品の値上がりや維持のコスト増を吸収できない。


















