福島泰樹(歌人・絶叫ミュージシャン)
10月×日 毎月10日、吉祥寺曼荼羅での月例「短歌絶叫コンサート」を終え、深夜帰宅。明朝は一番列車で弘前だ。
10月×日 車中、自著「寺山修司 死と生の履歴書」(彩流社 1980円)に目を通す。生誕90年記念講演「寺山修司と郷土青森」(弘前市立郷土文学館主催)は大盛況だった。
10月×日 弘前の詩人藤田晴央の案内で寺山生誕の跡地を巡り、碇ヶ関温泉に浸かり、葛西善蔵の文学碑に詣でる。
10月×日 葛西善蔵が気になり筑摩の「現代日本文学大系49」を紐解く。「湖畔手記」に《秋ぐみの、紅きを噛めば、酸く渋く、タネあるもかなし、おせいもかなし》の一首。そうか愛人おせいは善蔵の子を孕んでいたのか。
10月×日 塩見鮮一郎「中世の貧民 説経師と廻国芸人」(文芸春秋 979円)読中、寺山修司戯曲「身毒丸」(新書館 現在絶版)を思う。1965年刊行の歌集「田園に死す」(白玉書房 現在絶版)のルーツは平安の「日本霊異記」に遡る説話文学であったのだ。
10月×日 雨の朝、ボクシングライター丸山幸一が死んだ。早大西洋哲学科の後輩で試合が跳ねるとよく酒を飲んだ。小説「悪魔に愛されたボクサー」(松柏社 1540円)が遺作となった。集中、女子ボクサーを題材にした実存的心理小説は秀逸。
10月×日 昨秋、皓星社から刊行を開始した鎌田慧著「鎌田慧セレクション-現代の記録-」全12巻、第1回配本「冤罪を追う」を読み始める。「格差が拡大し差別と分断が蔓延するいま」「高度成長期の闇を暴く」とは、刊行の辞。狭山事件に次いで袴田事件を読み始めた時だ、川崎新田ジム会長新田渉世から電話。ボクシング界に袴田救援の輪を拡げた人だ。その偶然に驚く。
10月×日 ようやく5巻「自動車工場の闇」(3630円)を読了。次いで6巻「鉄鋼産業の闇」を机上に置く。
10月×日 経産省前での日本祈祷団による反原発抗議法会【ほうえ】も10年になる。3巻「日本の原発地帯」で鎌田慧は、経産省を「原発マフィア」と、弾劾。抗議文を読み始めると同時に雨……。



















