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 国民全体をパニックに巻き込んだ「令和のコメ騒動」の闇に迫る。

  ◇  ◇  ◇

「コメ壊滅」山口亮子著

「コメ壊滅」山口亮子著

 昨年、突如として起こったかに見えたコメ不足だが、本書によるとその真因を示す情報は、「コメ価格を引き下げる!」と豪語した小泉農相が就任した直後の「食料・農業・農村白書」で「ひっそりと公表」されていたという。2019年、20年と供給が需要を上回っていたコメの流通は21年に需給一致したのを機に急激に不足に傾く。22年、23年は倍々ゲームのようにコメ不足高がふくらんでゆくのだ。

 それを隠し続けたのが農水省。著者によるとコメの需給を調整するために支出される額が年間およそ3000億円、水田関連事業費がおよそ5800億円、備蓄米の買い付けと保管で年間500億円。しかもこれだけの費用を投じながら備蓄が払底する勢いで放出を続けている。こうしたかたちで無駄遣いされる金は、著者の試算によればなんと3兆円にものぼるのだという。

 驚くべき実態をわかりやすく説明する著者は元時事通信記者のジャーナリストだ。

(新潮社 968円)

「コメ高騰の深層」山下一仁著

「コメ高騰の深層」山下一仁著

 日本全体をパニックに陥れたコメ不足。いまも価格は高止まりしたままだ。騒ぎにならないのは実態が急激なインフレの陰に隠れたからではないか、という疑いはぬぐえない。そもそも国が減反などという策を長年押しつけてきたからだ、という批判は絶えない。本書は農水省の官僚時代から減反廃止を唱え、退官後は民間のシンクタンクで農業政策を専門としてきた著者によるJA農協と農水省批判。副題も「JA農協の圧力に屈した減反の大罪」と容赦ない。

 1970年代以来、GDPに占める農業の割合が急減する中で予算獲得のために自民党の農水族と農協にすり寄るようになった。これが官庁・族議員・業界団体(JA農協)という「農政トライアングル」を形成し、米価引き下げを頑強に阻んできた。減反は高い米価を維持するための愚策なのだ。

 本書はJA農協が駆使する兼業農家の囲い込み政策の具体的事例をつぶさに紹介する一方、族議員の動きや農水省の対応への批判を直言する。国の基本を誤る愚策は一刻も早く改めるべきだろう。

(宝島社 1100円)

「コメ危機の深層」西川邦夫著

「コメ危機の深層」西川邦夫著

 令和のコメ騒動、その「要因はいたってシンプル」と本書冒頭でいう著者。しかし本書を読み進むと複雑な様相だったことがわかる。コメ騒動の引き金になったのは昨年8月の南海トラフ地震臨時情報。ここで不安に駆られた消費者がコメの買いだめに走り、騒動は頂点に達した。しかし政府は秋の収穫期が近いことを理由に、すぐに新米が供給されるので落ち着くと判断した。類書はこの判断を批判するものが多いが、本書は「筆者自身が新米が出回れば事態が落ち着くと考えていた一人」だったと告白する。今では「恥じるばかり」と低姿勢だ。

 本書がユニークなのは「『日本のコメ』から『世界のライス』へ」という章での議論。国内のコメ市場は今後も縮小する。一方、世界貿易機関(WTO)協定に基づいて日本が関税ゼロで受け入れる輸入米は、今ではアメリカからの圧力によって対米比率が大きくなっている。しかしここにきて日本ブームが拡大したことから日本のコメの商業輸出量は増加傾向にある。政府も「新市場開拓用米」の名目で交付金で補助しているため農業者にとっては大いに有利。しかし実はこの交付金は世界で見るとかなり危ういリスクがあるという。

(日経BPマーケティング 1210円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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