西口の「ぼるが」でもつ焼を食べながらかつての新宿に思いを馳せる
下町とは違う雰囲気なのは土地柄か
東京の東側、いわゆる下町界隈にもこれくらい古い店が多く残っているが、明らかに雰囲気が違う。それはやはり土地柄によるものだろう。
そんなことを思いながらカウンターに陣取り、まずは生ビール(550円)とポテトサラダ(550円)。正面の棚にはもう飲まれることはないであろう数本のボトルと古い置物や昔の店のマッチが無造作に置かれている。その中の一本に映画監督の「山本薩夫」と書かれたシールが貼ってある。こんな人も来ていたのか。改めて、ぼるがの歴史を実感する還暦男。この店は映画監督や作家、役者などの客が多かったという。
アタシも作家になった気分でたまごたっぷりのポテサラを頬張り、生ビールをグビリ。サイコ~。もつ焼き盛り合わせを塩で5本(550円)とチューハイ(550円)を追加。そういえば以前、2階で飲んだことがあったが……。「今は人手不足で2階は開けていないんですよ」と、カウンターの大ママが話してくれた。その間も予約のグループが続々と入ってくる。
「最近の若い人はこんな古い店がいいみたいで。お客さんが言うんですよ、『壊さないでくれ』って」
間違いなくここは新宿の文化遺産だ。若者たちが酒を飲み、文学論や政治思想を交わしていた姿が目に浮かぶようだ。新宿が怖くないのはこんな文化の薫りのする人間くさい店を残しているからだ。さりげなくこういう店を残すところが、下町とはまた違う、新宿の粋な頑固さなのかもしれない。 (藤井優)
○ぼるが 新宿区西新宿1-4-18


















