西口の「ぼるが」でもつ焼を食べながらかつての新宿に思いを馳せる

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 以前、渋谷が怖いと書いたら同世代から賛同を得た。新宿も怖いけど渋谷とは怖さの種類が違うという。アタシもその意見に賛成。それは新宿ならばアタシらの言葉がまだ通じると思えるからだろう。ま、年取った証拠かな。

 新宿大ガードから思い出横丁を歩いて驚いた。あの路地が旗振りガイド付きの外国人観光客であふれかえっているのだ。だいぶ前から観光名所化してはいたが、これほどとは。アタシは逃げるように大通りを渡り、今回の目的店のある小田急ハルクの裏道にもぐりこんだ。

 その店は昭和の名店「ぼるが」。初代店主がロシア文学好きだったことから名付けたという。店名はボルシチつまみにウオッカという感じだが、正真正銘のもつ焼き酒場だ。その歴史は古く、思い出横丁時代を含め創業して76年。西口のビル街にぽつんとたたずむ古い一軒家。蔦の絡まるレンガ造りの外観は、酒場というよりカルチェラタンのカフェを思わせる。

 が、木製の扉の横には赤々と炭をおこした焼き台が外に向かって開かれており、うまそうなもつ焼きが香ばしい煙を上げている。

 焼いているのは現店主の高島さんだ。ここは数人の飲み仲間と来たことがあるが、一人は初めて。その旨を告げると、「カウンターでよろしければどうぞ」と、にこやかに案内してくれた。左側に7人ほどのカウンター、右の窓際には居心地よさそうな低いテーブル席が並んでいる。トイレ横から奥へ行くとかなり広くなっていて、薄暗い店内の壁にはマイナーな映画演劇のポスターが所狭しと貼られている。アタシは経験していないが、60年代の新宿はこんな感じだったと思わせる雰囲気である。

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