駒沢「煮込み かっぱ」酒なしの牛煮込みと白飯で蘇った15年前の思い出
出版不況により雑誌広告の売り上げが激減、呼応するようにアタシの仕事もなくなったのが2010年ごろ。
ちょうどそのころ、ドライブレコーダーが普及し始めた。その取り付け業務の会社を経営していたS君が見るに見かねて畑違いのアタシに仕事を手伝わせてくれた。
慣れない仕事を終え、彼のワンボックスカーで帰る途中、「晩飯食って帰ろう。おまえに食わせたいのがあるんだ」。彼がそう言って立ち寄った店が今回ご紹介する「かっぱ」である。
アタシがもつ焼きや煮込みに目がないことを知っていて連れてきてくれたのだが、ここのは牛モツではない。牛赤身の煮込みだ。昔と変わらず駒沢公園通りから、ちょいと入った小さな店。気がはやって早く着いてしまい、煮込みを炊くうまそうな匂いを嗅ぎながら店頭で待つこと30分。午後5時きっかりに店主が縄のれんを掛けに出てきた。
アタシの後ろには15、16歳の少年と中年男性。親子かと思ったが、会話を聞いていると先生と生徒のようだ。イイね。かっぱは酒は出さない。出している時期もあったが、泥酔者が増え、出さなくなった。今では牛煮込み定食のみである。だからこんなすてきな関係で飯を食いに来られるのだ。
昭和25年創業。現在は3代目が店を守っている。店内は煮染めて磨きこまれた渋いカウンターの7席のみ。手前から順に座っていくと、瞬く間に煮込みが出され、ご飯の量を聞かれる。煮込み(850円)とご飯の小(200円)。そこにきゅうりのお新香。
皿から汁があふれ、ピカピカのカウンターがダラダラ、ベトベトに。なるほど、カウンターのテカリの理由が分かった。きっとこのカウンター、舐めたらさぞうまいだろう。熱々の煮込みをフーフーしながら口に運ぶ。甘みのある牛脂の風味が鼻から抜ける。長時間煮込まれた牛の赤身は、繊維がほぐれていても弾力があり、とろけるなどという軟弱な言葉は似合わない。
そこに湯気のあがる白いご飯が来た。当日はこの時期には早い真夏日。身も心もビールを欲していた。が、そのご飯をひと目見てビールを忘れた。なぜならお櫃から盛られた炊きたてご飯がめっぽううまそうだったから。これが味噌風味の煮込みに合わぬはずはない。思わず、孤独の誰かさんみたいにご飯にぶっかけたいところだ。
















