志茂田景樹さん(作家)<中>
二木 1900回を超える読み聞かせ活動では、いろんな被災地も訪れ、被災した方々を励まされたとうかがっています。
志茂田 被災地を初めて慰問したのは福岡県西方沖地震(2005年)の時ですね。福岡市の避難所になっていた九電記念体育館で僕の『ぞうのこどもがみたゆめ』の読み聞かせを行いました。この物語は別れの場面が出てくるので、最初はまずいかなと思ったのですが、先入観を入れないでいつものようにやるべきだと思い直し、この作品を含め3作やったのです。やはり、『ぞう』を聞いて泣く子が一番多かった。まずかったかな、と思ったのですが、子どもたちが近づいてきて僕の手を握って放さない。「ひとりになってもしっかり生きていくんだよ」という作品のメッセージが伝わったんだな、と安心しましたね。
二木 東日本大震災(3.11)の後、東北へは行かれましたか。
志茂田 東北には3.11以前から何度も足を運んでいます。岩手県の大船渡市に三陸町(合併前は気仙郡三陸町)という町があります。02年、03年と2年続けて講演会と読み聞かせを行った場所です。3.11後に旧三陸町の小学校で読み聞かせを行った後、子どもたちに「(以前の読み聞かせを)覚えているよい子はいるかな」と聞いたところ、6年生の女の子がさっと手を挙げたのです。よく覚えていたと感動したのですが、考えてみたら前回はこの子が2、3歳のころ。後の記憶がついていたのですね。親から連れて行ってもらったことを聞いていて覚えていたのでしょう。