シニア就活ビジネスで急成長 20代社長はどうやって成功したのか

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シニアジョブ 中島康恵社長 (後編)

 プロサッカー選手の夢破れ、第2の夢として国士舘大学4年の冬に起業した中島さん。立ち上げたのは税理士にクラウドソフトを販売する会社だ。しかし、結果は大惨敗。2年半やって契約できた金額は、たった3万円。

「要はサークル気分だったんですね。一緒に始めた仲間3人のうち2人は半年で脱落。もう1人の東大生は残ってくれましたが、資金繰りのために借金までさせられて“なんで東大まで出て”と嘆いていました」

 就職活動先の社長から出資してもらった2000万円も底を突きそう。次の手を打たないと会社が潰れるという時、あるアイデアを思いついた。

「税理士ソフトを売り込みに行った会計事務所の所長が、シニアを採用したいと言うんです。経営者を相手にすることが多いので、落ち着いた中高年の方が欲しいと。シニアの就職難は知っていましたが、ニーズはあるところにはあるのだなと思いました」

■一人の再就職先探しに200社に電話

 これをヒントに、早速シニア専門の人材サービス事業を始めた。まずは職を求めるシニアを探すことから始めた。その方法は、巣鴨や三軒茶屋など高齢者が多そうな街に出掛け、暇そうにしているシニアに片っ端から声をかけるというもの。起業する時に、自分より頭の良さそうな大学生に声をかけたのと同じ手法だ。

「仲間4人でおそろいのTシャツを着て、チラシを配ったり、怪しまれないよう掃除道具を持ってボランティアのふりをしたり、あの手この手でなんとか数人のお客さまをゲットしました。次は就職先探しです。ハローワークに求人を出している会社に片っ端から電話して“仕事ありませんか?”と売り込みました。とにかく数撃ちゃ当たるという発想でしたね」

 初めて斡旋できた人のことを今もよく覚えているという。元調理師で、200社に電話してようやく仕事が見つかった。

「個人で200社に応募するのは不可能です。断られ続ければ自信もなくなる。その理由が年齢だとすれば、心も折れますよ。この大変さを代行してあげなければと強く思いましたね」

最大のハードルだから履歴書は代筆

 それからさらに1人、2人と成約が増えていき、初年度は4件だったが翌年は86件、翌々年は140件、さらに次の年は323件、そして昨年度は502件と、創業以来右肩上がり。売り上げも最高で前年比300%を記録するなど好調だ。成功の秘訣はなにか。

「シニア求人の最大のハードルは書類選考です。逆にそこを突破すれば成功率は高い。しかし、シニアの方は履歴書を書くのが数十年ぶりという人も多い。そこでヒアリングをして、すべてこちらで書くようにしました」

 ポイントはまず〈自慢げに書かない〉こと。在職中は部下を70人マネジメントしていたとか、表彰歴などはあえて外す。プライドが高くて扱いづらそうと思われないためだ。

 もうひとつは〈何歳まで働きたいか〉をはっきり書くこと。年齢が高いとすぐ辞めると思われがちだからだ。長期間働きたい意思があれば、履歴書に〈70歳まで就労希望〉などと書くのがいいそうだ。

 こうしたキメ細かい工夫もあって、シニア専門の人材サービス事業は順調に拡大している。ソフト会社としてスタートした知見を生かし、半自動的に求人をマッチングするシステムを自社で開発し、コストを大幅削減できたのも大きいという。

 ところで、気になるのはスタッフの年齢。20代半ばが中心だそうだが、シニアの顧客にナメられないのだろうか。

「最初はそれが心配だったのですが、意外とないんですよ。自分の息子より若いくらい年が離れていると、逆にやさしくしてくれますね」

 ゆくゆくは、シニア向けの婚活サービスや、地方在住者向けのオンライン斡旋サービスなども手がけたいという。

「世界で一番高齢者が多いニッポン。その数はこれからも増え続けるでしょう。だからこそ経済発展のためにはシニアの力が必要です。30年後、少子高齢化が進んでも経済は止まらなかったと言われる国にしたいですね」

 元サッカー小僧の夢はシニアとともに大きく羽ばたこうとしている。

(聞き手=いからしひろき)

▽中島康恵(なかじま・やすよし)1991年、茨城県生まれ。小学生の時からサッカーに打ち込み、高校3年時には全国大会出場。国士舘大学在学中の2013年の暮れ、シニアジョブの前身となるIT会社を設立。15年から50歳以上のシニア専門の人材サービス事業を開始。高コストといわれる同市場で、売り上げ前年比最高300%の成長を続けるなど注目を集めている。

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