1年たっても腐らない 農作物の鮮度を伸ばす特殊倉庫のヒミツ

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 コロナ禍で観光や外食など、大きな打撃を受けている産業がある一方、巣ごもり需要で伸びているのが、生鮮品などを取り扱うネットスーパーや産地直送ECといったネット経由の宅配事業だろう。こうした宅配事業を支えている倉庫や物流も日々進化しているという。

 そのひとつが農作物の物流で、野菜や果物は鮮度のいい状態で消費者の元に届ける必要がある。そのため、収穫後すぐに市場に流通させるのがセオリーだが農作物の腐りやすい性質を逆手に取った倉庫の保管技術で特許を取得し長期保管でも鮮度を維持しながら市場に農作物を安定供給している物流企業がある。

 農作物を中心に物流を手がける福岡ソノリク(佐賀県鳥栖市)の園田壽俊社長に、鮮度を保つ倉庫について話を聞いた。

「この技術が生まれたきっかけは種子島特産の安納芋でした。安納芋は寒さに弱く、9~11月に収穫した後は通常3~4カ月後の春ごろまでしか鮮度が維持できません。農作物は収穫後も自らエチレンガスを放出し続け、密閉空間で放出されたエチレンガスの成長ホルモン作用で農作物の熟成が進み最終的には腐っていきます。そこで、倉庫内を適切な温度や湿度にすることでエチレンガスの放出を抑えるとともにエチレンガスを排出する換気システムを倉庫に取り付けることで1年間保管でき、安納芋は年間を通して市場に供給できるようになりました」

 空気より軽く、倉庫内の天井付近に滞留するエチレンガスを継続的に換気した結果、1年保管しても腐敗が起こる安納芋はわずか3%程度で廃棄ロスにもつながる。適度に熟成されることで糖度は上がり、よりおいしい状態で出荷できるようになったという。

 ナシは3カ月、シャインマスカットは4カ月、デコポンは7カ月程度の保管が可能になり、旬のある果物も長期間楽しめるようになっているという。この特許は福岡ソノリクが取得し、現在、同社の九州、中国、関西の拠点で周辺生産地の農作物に生かされている。

価格安定や廃棄ロス防止に貢献

 デリケートな農作物の長期保管のメリットはどこにあるのか。

「台風などによる不作時には供給が減ることで価格が高騰する一方で、豊作時には価格下落が起こります。長期保管によって供給をコントロールすることで、消費者の手元に安定した数量、価格での提供が可能になり、農家さんにとっても収入が安定し、安心して生産拡大ができます」

 現在、西日本エリアで稼働しているこの倉庫技術が日本全国に広まれば、農家、消費者双方にとって大きなメリットになるだろう。

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