手がける“クラファン”年間300件以上 超売れっ子プロデューサーは一度会社を潰した苦労人
小西光治さん(クラウドファンディング・プロデューサー)
法隆寺がクラウドファンディングで維持費2000万円をたった1日で集めたというニュースが流れている。
この数年、よく耳にするクラウドファンディング、通称クラファン。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、新規開店や商品開発などをする際、その活動や思いに共感した人たちから幅広く資金を募る仕組みだ。
今回登場のこの人は、個人や企業から依頼されて小規模なクラファンを制作するプロデューサー。その数、年間300件以上。これほど多くのクラファンに関わっている人は、日本では他にいないはずだ。
実は本職は切り絵作家。それ以前は、村上ファンドに憧れた、ファンド会社社長という変わり種である。
生まれは大阪。高校2年の時にアルゼンチンに留学したのが、マネーに興味を持ったきっかけだ。
「現地では、アルゼンチンの通貨ペソが暴落。ドルで生活していたので事なきを得ましたが、お金の価値は不変じゃないんだと実感しました」
大学卒業後は、当時世間を賑わせていた村上ファンドに魅かれ、「自分もいつかファンド会社をつくりたい」と、修業のためにファンド会社に就職。営業の下積みを経て、26歳の時に顧客の資産を運用するファンドマネジャーに昇格。当時全国に2700人しかいない専門職「テクニカルアナリスト」として活躍し、29歳の時に独立。念願のファンド会社を設立した。
「預かり資産は20億円。運用益の2割を手数料としてもらう仕組みでした。最初のころはものすごく順調でしたが、今思えばそのころは誰がやっても儲かる時代でした」
当時の年収は1200万円超。家も買い、順風満帆な生活を送っていた。しかし31歳の時に、リーマン・ショックが起きる。
「幸いマイナスになったのはわずか1%。でも元本保証をしていたので、20億円の1%である2000万円を補填しなければなりません。リーマン・ショックで一気に顧客が離れ、会社は倒産しました。補填分2000万円は僕個人の借金として背負うはめになりました」
わが世の春から急落下。買ったばかりの家は人に貸し、大阪の実家に妻と子供2人を連れて転がり込んだ。