住友銀行を暴露した國重惇史はネアカで無手勝流だった
國重惇史(2023年4月4日没、享年77)
ベストセラーとなった『住友銀行秘史』(講談社)の著者で元同行取締役國重惇史は、鼻と口に大きなアザをつくって現れた。酔っ払って転び、大地とキスして30針も縫ったというが、額面通りに受け取ることはできなかった。7年前のことである。
2016年10月10日付の『朝日新聞』「ひと」 欄に取り上げられた國重には「住銀取締役などを経て楽天副会長を務めたが、2年前に女性問題で辞任」という説明がついている。
その國重に、どんなタイプの女性が好きかと尋ねると、一言、「タイプはありません」 という答えが返って来た。
國重も私も1945年生まれ。同い年に吉永小百合がいるが、國重は彼女も好きだったらしい。しかし、同い年の死はやはり堪える。
住友銀行でエリート街道を歩きながら、内部告発の手紙を書いたと言えば、たくましくて厳めしい男を想像するが、ほとんど無手勝流のあっけらかんだった。
1990年から翌年にかけて、当時の大蔵省銀行局長・土田正顕に宛てた内部告発文を読むと. もちろん緻密さはあるが、損になるか得になるかをチマチマ計算してはいない。そのころ 私は「イトマン事件」渦中の住銀を取材していて、のちに國重が書いたとわかる告発文を手に入れようと躍起になっていた。
対談の席でそう告白すると、國重は「言ってくれれば」と笑った。そんな冗談をとばすほどに國重は重々しくない。小柄でネアカだった。