黒川紀章設計「戦没者慰霊塔」も丹下健三設計「香川県立体育館」も解体…財政難で維持できなくなった名建築
莫大な維持管理費がかかるスポーツ施設
モニュメントと並んで問題になりつつあるのが、同時期に各地に建設された屋内体育館などのスポーツ施設だ。高度経済成長期は東京オリンピックの開催によって人々のスポーツへの関心が高まっていった。さらにスポーツが健康福祉の促進に期待されたこともあって、自治体はこぞってスポーツ関連の予算をつけ、関連施設の建設を進めていった。
しかし、スポーツ施設は多くが大規模で、建設費が高いうえ、維持管理費にも莫大な費用がかかる。年間の光熱費だけでも相当な額になり、改修の際は建設費以上の費用が必要になるケースも珍しくない。高度経済成長期に建設された施設は耐震基準が現行のもに合っていないことも多く、財政難といえども時間的な猶予はそれほどなく、改修もしくは建て替えが待ったナシなのだ。
そんな状況で注目されたのが、1964年に丹下健三の設計で建てられた「香川県立体育館」である。建築関係者から反対の声が上がったものの、現在、取り壊しが進んでいる。それでも、代替地に新しい施設を建てた上で取り壊されるのだから、スポーツをしたい県民のニーズは満たされる。取り壊すだけよりは、マシだろう。
石川県小松市の「こまつドーム」に至っては、わずか30年で解体が決まってしまった。改修費用が高額になるため維持を断念したと報じられているが、解体後、その代替になる施設が整備される可能性はおそらく、ない。スポーツ施設、特に大規模なドームの維持は自治体にとって大きな負担で、今後、同様のケースは増えると予想されている。
■自分たちのものと思えるかどうか
建築物の取り壊しは、大規模な歴史的名建築だけではない。財政難と人口減少のため公民館のような施設まで統廃合されることが少なくない。公立の美術館や博物館も先行きが厳しい。収蔵庫のスペースがなくなり、収蔵品の受け入れを停止している例も増えている。こうした施設は空調などに電気代がかかりすぎるのである。それだけに、施設そのものの廃止を検討するケースが出てきても、おかしくないだろう。
駅舎の取り壊しも進む。JR四国は利用者が少ない駅では、木造駅舎を取り壊し、バス停のようなアルミ製の駅舎に建て替えている。JR西日本の倉敷駅は、ホテルが入っていた上層階をまるまる削って、中規模な駅舎に“減築”した。倉敷クラスの都市ですらこうした事例が起きるのだから、地方における駅舎の解体は路線廃止と合わせて進んでいくのだろう。
自治体が財政難に苦しむ中で施設を維持していくためには、感情論になってしまうが、住民が“建築は自分たちにとって大切な社会インフラである”と考えられるかどうかにかかっているといえよう。施設を必要としている住民が、自発的に管理に当たっている例もある。多くの自治体が財政難だけに、何もかも行政任せにする時代は終わった。これからの時代は、住民の愛着と行動力に施設の未来がかかっている。
(取材・文=山内貴範)
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