出口なき麻薬経済から抜け出せない世界経済の正確な見通し
米国は9年半ぶりの利上げに踏み切ったが、欧州はマイナス金利、日本は異次元レベルの“激ゆる”緩和を継続している。米国と日・欧の金融政策の乖離によって、16年の世界経済の混乱は避けられない。まず米国では利上げのマイナス面が顕在化。景気の腰折れ懸念が高まっている。市場関係者の中には「もう一度、利下げするんじゃないか」という見方もあるほどだ。
そこに重たくのしかかるのが、原油価格の凄まじい急落である。
この1年半で価格は3分の1になるほど下げたが、反発の気配はない。それも当然で中国経済の急ブレーキに加え、米国の利上げによって新興国から投資マネーも大量流出している。世界のオイルをのみ込む旺盛な需要は16年も戻りそうにないからだ。
となると、15年末には1バレル=30ドル台半ばだった原油価格が、16年には30ドルを割り込み、20ドル台になるかもしれない。
「原油がここまで激安水準になると、米国発の『シェールガス革命』はもはや幕引きムードです。すでにシェールガス関連企業の割合の高い米国ジャンク債市場は大荒れ状態ですが、一獲千金を狙ったベンチャーへの巨額融資が次々と焦げついています。こうした債権は複雑な構造で証券化されてバラまかれている。芋づる式に不良債権が拡大する流れは、08年のリーマン・ショックを引き起こしたサブプライム危機を彷彿させます。原油価格の暴落により、世界経済は恐慌前夜のような状況です」(経済評論家・斎藤満氏)
量的緩和政策は時に麻薬に例えられるが、原油暴落ショックに火がつけば当然、日銀や欧州中銀にはマーケットからの苛烈な追加緩和圧力がかかるだろう。出口なき麻薬経済から延々と抜け出せなくなるのだ。