甘利問題なぜ動かず 弁護士・郷原信郎氏「検察の忖度」指摘

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「まさに絵に描いたようなあっせん利得」――。甘利明・前経済再生相をめぐるUR(都市再生機構)への“口利きワイロ疑惑”で、発覚当初からこう指摘した弁護士の郷原伸郎氏(61)。先月の衆院予算委の中央公聴会に公述人として出席した際も、あらためて「(あっせん利得処罰法の適用対象になる)ど真ん中のストライクに近い事案」と断じていた。東京地検特捜部を含む23年間の検事経験を踏まえた法律家の目に、今回の甘利問題はどう映っているのかを聞いた。

■「賄賂」系は公務の廉潔性を損ない悪質

――甘利疑惑はずっと「悪質」と指摘されていますね。

 甘利前大臣は大臣室で受け取った50万円を含め合計100万円の現金受領と、秘書が500万円の受領を認めています。現金を渡した建設業の元総務担当者の録音テープでも、“口利き”の際の面談や金銭授受の場面が記録されている。大臣が特定業者から相談や依頼を受けて対応し、現金を受領したのであれば前代未聞。辞任は当然です。

――国会議員をめぐる「政治とカネ」の問題はこれまでも散々、取り上げられてきました。今回の甘利問題が、それらと異なるのはどの部分でしょうか。公聴会では「政治とカネ」問題には3分類あると説明していましたが。

「政治とカネ」の問題は「政治資金の公開」系、「寄付制限」系、「賄賂」系の3つに大別できます。政治資金は通常、寄付やその使途が政治資金収支報告書で公開されている。政治家や政党の活動が政治資金によって不当な影響を受けていないかどうかを監視するためです。そこで、収支報告書の虚偽記載などが問われる。これが「政治資金の公開」系です。また、「寄付制限」系とは、寄付について、政治資金規正法で制限されている連続赤字会社や補助金受給企業からの寄付の有無や、量的制限に違反していないか、という問題です。ところが、「賄賂」系は、公務の廉潔性を損なう「犯罪行為」で、悪質極まりないものです。政治的公務員の職務の信頼性にも関わる問題であって、真相を解明した上で厳正な処罰が行われる必要があります。

――甘利前大臣のケースは、その「賄賂」系に当たると。

 詳しく言うと、ふつう、国会議員の場合、直接の職務権限は、議会の質問・表決だから、その対価として賄賂と認められるものの範囲は限られます。そのため、国会議員に収賄罪が適用される例は極めて少ないのです。そんな中で、むしろ、職務権限を背景に行われる、行政官庁への「口利き」で対価を受け取るケースが問題になり、「あっせん利得処罰法」が制定された経緯があるのです。その一方で、国民の負託を受けた国会議員が行政庁に働きかける行為はある意味、政治活動です。そこで「あっせん利得処罰法」によって政治活動そのものを萎縮させてはならない、となり、処罰対象の要件を絞ったのです。

――具体的にはどう厳格化したのでしょうか。

 例えば、予算の「策定」段階の行政庁への働きかけは、政治活動の自由が保障される必要性が高いと判断されている。一方、予算「執行」段階の「契約」は、適正かつ公平に行われるべきもので、ここに政治家が契約の相手方や契約内容に介入することは正当な政治活動とは言い難い。そこで、契約に関する行政庁への「あっせん」によって利得を得る行為を「口利き」とし、処罰の対象としたのです。

――「権限に基づく影響力の行使」も要件とされています。

「権限に基づく影響力」の典型は、法律・予算を多数決で成立させることに関して他の議員に働きかけを行い、意思を形成することです。与党議員であることや、党内で有力議員であることは影響力の大きさの要素であると言えるでしょう。

――その厳格なハードルに甘利疑惑は触れたのですね。

 あっせん利得処罰法は対象を「行政処分」と「契約」に関するものに限定した上、「権限に基づく影響力を行使」した場合――とした。つまり、政治活動を萎縮させないように配慮しつつ、悪質な行為を処罰するために「二重の絞り」をかけたのです。この点から見ると、今回、取り沙汰されているURとの補償交渉は「契約」に対するあっせんで、甘利前大臣の秘書は、お願いというレベルをはるかに超えて補償金額にまで介入し、その報酬として金銭や接待を受けていたと報じられている。さらに甘利氏は現職閣僚で、与党内でも大きな発言力を持っていた。つまり、「権限に基づく影響力」を発揮するのが十分可能な立場だったのは間違いないでしょう。まさに「ど真ん中のストライク」に近い事案と言えます。

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