甲状腺がんになりうる経過観察の子どもたちは“3500人”いる
柳原敏夫さん(弁護士)
2011年3月の東京電力福島第1原発事故からまもなく8年半になるが、放射線被ばくによる甲状腺がんの疑いのある子どもが増え続けているという。
甲状腺検査の対象は、事故当時18歳以下や事故後1年間に生まれた福島県内の子どもら計38万人。県は甲状腺がんやその疑いがある子どもは218人(今年3月時点)としている。だが先月、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」は〈県の集計は6月末時点で少なくとも18人漏れている〉と発表。県外の医療機関で見つかったり、検査後に経過観察になって、がんと診断された例があるという。
先月の県民健康調査検討委員会は県民を対象に実施している検査では27万540人のうち、71人に「甲状腺がんあるいはがんの疑い」と報告したが、この71人について「被ばくとの関連は認められない」と結論付けているのだ。
「子ども脱被ばく裁判」弁護団で「市民が育てる『チェルノブイリ法日本版』会」共同代表でもある柳原敏夫さんは言う。
「そもそも71人もいるのは多いし、県民健康調査検討委に2次検査でがんの可能性が低いとして“経過観察”と診断された子どもは今年7月時点で3500人を超えます。しかし、のう胞やしこりが大きいため依然要注意です。ところが、経過観察からは保険診療へ移行になるため県は関知しないという姿勢なのです。経過観察で放置しておくと、がんに発展する可能性が高まります。私たちが裁判で何度も問いただしても、県は経過観察中に甲状腺がんが発症した症例数を決して明らかにしません」