屋良朝博氏「辺野古一択は時代錯誤」政府の思考停止を看破
8月下旬、沖縄の米軍普天間飛行場所属のヘリコプターから、窓が落下する事故がまた起きた。重さ1キロの窓は人に当たれば死に至る。ところが、米軍からの連絡は発生2日後と遅れ、日本政府は「被害がない」と飛行自粛すら要請しない。「辺野古NO」の民意を無視し続ける安倍政権は、相変わらず沖縄県民を置き去りだ。沖縄タイムス記者時代から米軍再編を取材、研究してきた衆院議員が、政府の思考停止にバッサリ切り込む。
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■日本は「小野田症候群」に侵されている
――また米軍ヘリから窓が落下しました。
普天間の危険性が改めて証明された事故ですよね。米軍からの連絡が遅れたことも由々しき問題で。主権国家として米国との付き合いが本当に成立しているのか、ということです。国民の生命・財産を守り、国土を統治する「主権」を放棄し、政府と政府の契約、国民と政府の契約が全く履行されていない。そういう観点でこの事故を見た時に、沖縄はこの国の中でメンバーシップを与えられているのかどうか。根源的な疑問を抱かざるを得ません。
――2017年にも米軍ヘリの窓が小学校に落ちました。何度も繰り返されています。
あの事故後、日本政府は運動場にシェルターを造る対応をした。まるで戦時中ですよ。「米国にはモノが言えないので、沖縄もその辺を理解して、我慢してちょうだいね」という状況がずっと続いている。日本は「小野田症候群」に侵されていると、僕は講演などでよく言うんです。
――小野田症候群?
今の日本は、戦争が終わっていないと思ってジャングルの中をさまよっていた故小野田寛郎陸軍少尉と同じです。冷戦時にできた沖縄の基地が21世紀にも必要なのかどうかを問い直すことなく、現状維持こそが日本の生きる道だと信じ込んでいる。冷戦が終わり、アジアの中で日本はどう生きていくべきかという新しい思考が全く生まれず、日米同盟さえ維持していれば日本は安泰だと考えている。
――確かに、思考停止に陥っています。
沖縄の現状は大きく変化しています。2013年に中国人観光客は6万8000人でしたが、18年は69万人と10倍増です。その中国人観光客に人気の観光スポットのひとつが嘉手納基地を見渡すことができる「道の駅かでな」の屋上。若いカップルが「うぉ~」って大喜びして自撮りしていますよ。極東最大の米空軍基地が何のためにあるかというと、中国抑止でしょう。そのために日本が思いやり予算という上納金を出して基地を維持しているわけですが、そこへ中国人観光客がたくさんやって来て、写真を撮っている。これが現実です。「強固な日米同盟」と繰り返す日本の安保政策を担っている人たちは、「中国と北朝鮮が脅威であり、それに日米同盟で対峙する」と言いますが、現実を見ないで空想の中で生きているようなものです。
――8月に訪米したそうですね。
「沖縄の基地集中は誰の責任ですか」と、米政府に聞きたいと思ったのです。アジア太平洋地域に10万人いる米軍ですが、韓国は2万7000~2万8000人で、沖縄は2万5000人。面積の比率で沖縄の負担はギネスに載せてもいいくらいの集中度です。訪米して国務省と国防総省の日本部(ジャパンデスク)の副部長に会って、沖縄への基地集中は米国の意向なのかと聞いたところ、「日米が協議して決めています」という回答でした。それが再確認できただけで十分でした。
――十分とは、どういう意味ですか?
日本政府が沖縄の基地集中を正当化する時に言うのは「地理的優位性」です。そうなると他に選択肢はなく、神様が沖縄の人々に過酷な運命を与えたという理解になってしまうけれど、「日米の協議事項」ならば、協議すれば変えることができるわけです。集中解消には沖縄の部隊を別の場所に移すしかなく、それが海兵隊をハワイやグアムへ分散・移転する米軍再編です。しかし海兵隊の一部が残るから、普天間基地を閉鎖しても辺野古が必要だと日本政府は言う。ですが、それも日米の協議によっては変えられるということを確認できた。