(1)「維新という妖怪の」正体は格差を分断に転化し、さらに組織化に成功したこと
昨年10月の衆院選で日本維新の会とその中核を担う大阪維新の会(以下、維新と略す)は、前回総選挙の11議席から41議席へと“躍進”し、一躍全国からの注目を集めている。10年以上にわたって大阪の地方政治を牛耳り、橋下徹氏というタレント政治家に率いられた、ある種キワモノ的な政治勢力というイメージの強い維新ではあるが、その“ひとり勝ち”とも言えそうな“躍進”に「維新って何者?」「なぜ、そんなに強かったの?」という疑問が湧き起こったのも不思議ではない。
維新の本拠地たる大阪ではいざ知らず、お隣の京都や神戸ですら、大方の人びとにとって維新は未知なる存在だ。それどころか、「貧困と格差に喘ぎ、現状打破を求める若年貧困層の支持を集めている」などという都市伝説めいた謬説がまことしやかに流布されている。マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」ではないが、「一匹の妖怪が大阪を歩き回っている─維新という妖怪が」といったところだ。
3年ほど前に発表した「維新政治の本質─その支持層についての一考察─」(「住民と自治」667号=自治体問題研究所)という論考がにわかに注目を浴び、本紙の「注目の人直撃インタビュー」(2021年12月3日付)に取り上げていただくことともなったのだが、筆者はこの間、この「維新という妖怪」の正体を見極めようと努めてきた。その成果は、「維新政治の本質─組織化されたポピュリズムの虚像と実像」(あけび書房=3月3日刊行予定)という近刊にまとめたところでもある。