ラグビーW杯で8強目指す 日本代表FB松島幸太朗を直撃した

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「完全にプロにならないと…」

 持ち前のアタックに加え、キックの正確性も身に付けた松島にとって、ディフェンスが課題だという。

 ジョセフHCの防御システムは、相手との間合いを素早く詰めてプレッシャーをかける攻撃的なもの。日本代表と連携して強化を図るスーパーラグビー(SR)サンウルブズでも、同様のシステムを採用。松島は18年4月14日のSRブルーズ戦に先発しながら、ディフェンスが機能しなかった。後半10分、スペースを突かれてトライを許すと、サンウルブズの指揮官を兼任していたジョセフHCから交代を告げられた。これまで、負傷はともかく、プレーの精度を欠いてベンチに下がるのは、ほとんどなかったことだろう。

あのディフェンスシステムは僕には合ってないと思う。相手が大きければ、同じ力、スピードなら、間違いなく相手の方が強い。サントリーやエディー(ジョーンズ前日本代表HC)の時は、待って待って最後に仕留める感じで行けたので、(今のシステムは)すごく難しい。FBは毎回、前に行く余裕はないですが、どこかで妥協できると思うから、バックスリー(両WTBとFB)でコミュニケーションを取れば改善できると思う」

 日本が入ったプールAは最低でも、世界ランク2位のアイルランド、同7位のスコットランドのいずれかを倒さなければ、8強入りは見えてこない。スコットランドは前回大会で唯一、黒星を喫してベスト8入りを阻まれた因縁の相手だ。冷静な状況判断と試合コントロールに長けた世界屈指のSHグレイグ・レイドローを中心としたチームに、16年6月のテストマッチでも2連敗した。

「スコットランドは、ストラクチャー(セットプレー)のチーム。BKにも走れる選手がいるので、自分たちのディフェンスで、どれだけプレッシャーをかけられるか。どの試合でもそうですが、ディフェンスでプレッシャーをかけ続けて精度の高いアタックができれば、勝機は見えてくると思う。もちろん、できるだけ上に行きたい。まずはグループリーグ突破が目標になるので、しっかりと勝ち切って、準々決勝、準決勝と1試合ずつ戦っていく」

 高校卒業後、多くの強豪大学の勧誘を蹴って単身、南アに渡った。SRシャークスの育成組織で2年間、実力を養い、早くから世界のラグビーを経験した。日本と強豪国のラグビーを取り巻く環境について聞くと、しばらく考え込んだ後、こんな答えが返ってきた。

「日本(のトップリーグ)は完全にプロではないので、ハングリーさは足りないのかもしれない。最終的な目標をどこに置くのか。日本では社員選手ですし、引退後、会社に残るという選択肢もあるけど、完全にプロ化にならないと(選手の意識は)変わらないのではないか」

 前回大会では南アを撃破して世界中のファンを驚かせた。

「今回も、グループリーグを突破すればラグビーファンは増えると思うので、(前回を上回る)結果を残すしかない」

 (取材・文=近藤浩章/日刊ゲンダイ)

▽まつしま・こうたろう 1993年2月26日、南アフリカ・プレトリア生まれ。178センチ、88キロ。ジンバブエ人の父と日本人の母を持ち、2歳で来日。桐蔭学園高2年時に出場した全国高校ラグビーでは東福岡に敗れて準優勝。翌年の花園では、同じ東福岡と同点(31―31)優勝に貢献した。準決勝の大阪朝鮮高戦で、自陣ゴール前からの100メートル独走トライは今でも語り草。高校卒業後は、スーパーラグビー・シャークス(南ア)の練習生を経て14年、サントリー・サンゴリアスと契約。日本代表は、同年5月のアジア5カ国対抗のフィリピン戦で初出場。代表キャップ数30。トップリーグでは3シーズン(14―15年、16―17年、17―18年)でベストフィフティーンに選ばれ、17―18年シーズンはMVPを受賞した。

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