PTSD不安視も…バド桃田の図太さ・しぶとさは筋金入り

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 交通事故に巻き込まれ、眉間部など顔面3カ所の裂傷と全身打撲などの重傷を負ったバドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25)が15日、遠征先のマレーシアから帰国した。

■国内病院で精密検査

 帽子にサングラス、マスクを着用して姿を見せた桃田。眉間にできた10センチ近くの傷は痛々しく、空港職員に促されて関係者通用口から帰宅の途に就いた。今後は国内の病院で精密検査を受け、異常がなければ1カ月程度で練習を再開。3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)での実戦復帰を目指す。

 事故に遭ったワゴン車を運転していた現地のドライバー(23)は死亡。体へのダメージに加え、交通事故を目の当たりにした精神的なショックからPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患い、メンタルに悪影響を及ぼし、東京五輪での金メダル取りを危ぶむ声も聞かれる。

■精神回復に6カ月

 独協医科大学埼玉医療センターこころの診療科の井原裕教授がこう言う。

「桃田選手には肉体的にも精神的にも、相当な交通事故のダメージを負っているはずです。今回の件が引き金となってPTSDを発症するリスクはあります。五輪が開幕する7月にピークを持っていくためにも、今後6カ月程度は精神状態の回復、安定に努めるべきでしょう。事故時と同じような状況、環境に置かれると、嫌な記憶が思い起こされるので、移動は車を避けて電車にしたり、ワゴン車ではなく大型バスにするなどの細心の注意を払うべきです」

 実際、PTSDに苦しむアスリートは少なくない。2016年リオ五輪レスリング55キロ級で吉田沙保里の4連覇を阻止したヘレン・マルーリス(28=米国)もそのひとり。18年1月にインドでの大会で脳震とうを起こし、それ以降は不眠症やタックルへの恐怖心に悩まされている。東京五輪では、世界女王川井梨沙子(25)との金メダル争いが確実視されるマルーリスは長い間、右肩など度重なる故障に苦しんでいることもあり「脳震とうの症状は故障のひとつとして付き合っていくしかない」と割り切ったように話している。

 マルーリスのようにタフな精神力の持ち主ならともかく、選手によっては選手生命を奪われるケースもある。

 チームドクターから性的虐待を受けた米女子体操代表選手の多くは、長期間にわたって男性不信などのトラウマ(心的外傷)に苦しみ、異性のコーチを拒絶し、練習にも身が入らず、引退を余儀なくされた。10年バンクーバー冬季五輪リュージュにカナダ代表で出場したテレンス・コシカーはグルジア人選手がコースを外れて鉄柱に激突して死亡したのを目の当たりにして、幼少期に負った大けがの記憶が蘇り、恐怖心でしばらく競技から遠ざかった。日頃から心技体の向上に務めているトップアスリートでもトラウマに悩まされており、桃田も決して例外ではないのだ。

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