釜本氏が明かすメキシコ五輪銅メダル秘話「腑抜け状態だったチームはクラマーさんのゲキで生き返った」

公開日: 更新日:

 1968年メキシコ五輪は第1戦のナイジェリア戦で3ゴールを決めて3―1の勝利。初戦は本当に大事だからね。森保ジャパンも、最初の南アフリカ戦で勝ち点3を逃せばエライことになる。なりふり構わずに勝ちにいってもらいたい。

 2戦目はブラジルと1―1で引き分け、3戦目はスペインとスコアレスドロー。2勝1分けのスペインに次いで1勝2分けで決勝トーナメントに進出できた。

 準々決勝のフランス戦では2ゴールを決めて3―1の勝利。準決勝の相手はハンガリー。最終的に金メダルを獲得した強豪に0―5とコテンパンにやられてしまった。

 開催国メキシコと銅メダルをかけた3位決定戦は中1日。しかし、選手一同、大差負けのショックが尾を引き、腑抜けになった状態だった。

 メキシコ戦前日の夕食会でのこと。FIFAの役員という立場でメキシコに滞在していた「日本サッカーの父」クラマーさんがやってきた。

「明日、君たちはどう戦うんだ? 勝てば銅メダル。負ければ何も手にしないで日本に帰る。どっちがいい? 銅メダルもいい色をしているよ」

 選手の心にじんわりと染み込んでいった。

「さぁ~やろうぜ!」

 クラマーさんのおかげでチームが生き返った。

 ま、本音を言うとボク自身は「(ハンガリーとは)レベル差があり過ぎた。50回やっても勝てない。0―1とか僅差で負けて引きずるよりも(0―5で)良かった」とスパッと気持ちを切り替えていたけどね。

3位決定戦で杉山さんとの個人練習が生きた

 3位決定戦は前半に2ゴールを決め、後半もメキシコの猛攻に耐えて2―0で勝利。2ゴールとも左ウイングのリュウさん(杉山隆一)からのパスや。合宿で練習が終わった後は、3歳上のリュウさんと2人で個人練習をやってきた。ケンカ腰で随分やり合ったモンや。

「リュウさん! 自分はこう動きたい。何でこっちにボールを出してくれないんですか!」

「ガマッチョ! おまえはこっちに動け。そしたらそこに出してやる!」

 毎回200本はやった。互いのプレーを信じ合えるようになり、それがメキシコ五輪本番で実った。

 メキシコ戦は特に後半のプレーが心残りだったね。

 実はハンガリー戦の前半15分くらい、相手DFに左足を思いっ切り蹴とばされ、後半になると満足に動けなくなった。メキシコ戦の前半は痛みが出なくて良かったけど、ハーフタイムからジンジン痛くなって、どうしようもなかった。

 後半はGKの横山(謙三)さんのPKストップなど「ゴール担当のリュウさんとボク」以外の選手が、それこそ体を張って守ってくれた。チーム全員で掴み取った銅メダル。

 森保ジャパンが決勝に進み、銅以外の色のメダルを獲得することを心から祈っています。

(構成・日刊ゲンダイ)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • サッカーのアクセスランキング

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  3. 3

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  4. 4

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 5

    W杯8強へ森保J「5人の重要人物」 頭痛の種は主将・遠藤航の後継者…所属先でベンチ外危機

  1. 6

    サッカーW杯「日本単独開催」は夢のまた夢…拡大路線でもはや「共催」か「中東」の二者一択

  2. 7

    待望の独1部初ゴール!元軍人の父を持つ帰国子女の日本人DFが代表CBに殴り込み…森保監督も用意周到に“手当済み”

  3. 8

    なでしこ史上初「外国人監督誕生」に現実味…池田太監督の退任の裏にJFA会長の強い意向

  4. 9

    なでしこ初の外国人監督は“イケオジ”…ニルス・ニールセン新監督の手腕と評判 

  5. 10

    Rソシエダ久保建英が英リバプール入りなら遠藤航は“玉突き放出”へ…11月はゴラッソ連発で存在感マシマシ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか