かつて智弁和歌山と智弁学園を指揮した高嶋仁氏が明かす 兄弟校対決への思い、孫の活躍、中谷監督の重圧

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 史上初となった甲子園の兄弟校決勝戦は“弟”の智弁和歌山が“兄”智弁学園を破り、21年ぶり3度目の夏制覇を果たした。かつてこの2校を指揮し、現在、両校の名誉監督を務める前智弁和歌山監督の高嶋仁氏(75)に話を聞いた。

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 ◇  ◇  ◇

 ――まさかの兄弟校対決でしたが、心中複雑ではありませんでしたか。

「うれしいはうれしいし、両校の関係者は喜んでいると思いますよ。もう夢みたいなものですからね。ただ、僕としては両校優勝って形にならないものか、なんて思ったりもしました(笑い)。決勝戦はラジオで解説をしていましたが、『よっしゃ! 打った!』とか言えませんし(笑い)」

 ――お孫さんの高嶋奨哉(3年)も決勝戦では5打数2安打3打点と活躍した。「まだ智弁和歌山で指揮を執っていたら」と思ったことは?

「まあ、ないってことはないんですけど、そうなったらチームがおかしなことになったでしょう。さすがの僕も孫を厳しく怒ったりできませんし、それだと周囲とうまくいかない。(後任の)中谷(仁)監督(42)もやりにくかったと思いますよ。ヘタクソなのに、前監督の孫だから使わないわけにはいかんし(笑い)。もともと甲子園で優勝するようなチームに入る子じゃなかったんですけど、本人が『どうしても』と進学を希望した」

 ――大会中はアドバイスなどもされたとか。

「調子が悪くなると電話は来ますね。打てなくてしょぼくれてたので、『打撃が引っ張りになってるからあかんのや。センター中心に打ち返せ』と大会中にアドバイスをしました」

県外枠撤廃と部員増

 ――高嶋さんは以前、「奈良智弁と和歌山智弁は兄弟校だが、練習試合はほとんどしなかった。どっちが勝ってもカドが立つから」と話していました。現在、両校の関係はどうなのですか。

「練習試合をしているかはわかりませんが、僕が監督だった頃とはかなり変わりましたよ。今は修学旅行も一緒に行っている。昔は和歌山の方はオーストラリア、奈良は確か韓国だったかな? 行き先も違っていたんですが、僕が退任してからは(両校の野球部員が)同じバスに乗って修学旅行に行っています。兄弟校なのに部員が顔を合わせる機会すらまれだった昔とは違いますよ」

 ――変わったといえば、現在の智弁和歌山は部員数39人。以前は1学年10人前後の少数精鋭でした。今回はベンチ入り18人中、9人が和歌山県外、鳥取の選手もいます。

「増えましたね。僕の頃は県外枠は1学年2人だったんですが、その枠も中谷監督になってから撤廃されました。だから、全国から部員を獲得できるようになった」

 ――かつて智弁和歌山は寮がなく、県外出身部員は下宿していましたが、今は智翔館という寮もある。

「あれは中谷監督がつくったと聞いています。建設に学校は関わっていないはず。ただ、グラウンドもだいぶ、整備されて奇麗になったし、部員数が増えたように学校のバックアップもある。制限のある中で選手を絞っていた僕の頃とはえらい違いですよ(笑い)」

「中谷監督は勝敗が自分の契約に関わってくる」

 ――選手の進路もかつては大学進学が多かったが、現在は社会人やプロ入りも増えてきた。以前、高嶋監督は日刊ゲンダイ連載で、「部員それぞれが行きたいと思う大学に行かせてやりたい。そのためには補欠は少ない方がいい。少数精鋭なら3年生全員がベンチに入れる」と話していましたが……。

「寮がなく、超一流の子が進学先に選んでくれなかった僕の時代と違って、最初からそういう選手を獲得していますからね。近年の智弁和歌山は体格のごっつい子が多いですよ。1年なのに180センチくらいあったりと。まあ、この辺りは中谷監督が教師ではない、ということも関係しているでしょう」

 ――いわゆる雇われ監督、ですか。

「チームの勝敗が自分の契約に関わってくるので、中谷監督も厳しい立場ですよ。卒業生の進路? それは中谷監督が面倒を見ていると思います」

 ――智弁学園と選手の取り合いになることは?

「それはないと思いますよ」

 ――両校の名誉監督になったことで、智弁学園に行く機会も増えたのですか。

「ええ、昨日も顔を出しました。今日の試合の解説をするので、どんなものかとのぞきに行ったんです。奈良の県大会決勝が終わった後も、差し入れに行きました」

 ――小坂(将商)監督(44)からアドバイスを求められることも多いのでは。

「連絡すると『すぐに来てください』ということが多いんです(笑い)。さすがに和歌山で監督をやっていた頃はそういうのはありませんでしたよ」

(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)

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