コメ騒動ふたたび?

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「日本人は日本のコメを食べ続けられるか」稲垣公雄、三菱総合研究所「食と農のミライ」研究チーム著

 大混乱の記憶さめやらぬ令和のコメ騒動。その悪夢がふたたび!?

  ◇  ◇  ◇

「日本人は日本のコメを食べ続けられるか」稲垣公雄、三菱総合研究所「食と農のミライ」研究チーム著

 日本の食料自給率が4割を切る低さというのは今や周知の事実。これでは食料安保など絵に描いた餅。いたずらに不安と排外主義をあおるだけ。責任の一端がむちゃな減反政策にあるのは明白だが、コメ不足を農協(JA)の責任と押しつけるのは筋違い、というのが近年の識者の見方だ。本書もそのひとつ。

 JAとそれ以外の商系(一般のコメ流通業者)の違いは、かつては収穫したコメの乾燥調製の有無だったが、今では中規模農家の多くが自前で乾燥機を保有する。ならば高値を提示する商系が有利なのは必然。また米価高騰を複雑な流通機構のせいとする見方も、実は多数のプレーヤーが加わることでそれぞれの利益率は低くなる。つまり流通機構が暴利をむさぼっているわけではなく、コメ卸の利益が増えたのは「原因ではなく結果」なのだとする。

 著者は三菱総研のアナリストとして日本のものづくりや食農分野に関わってきた。そのチームでは2005年ごろから加速した農家の大規模化と生産性の向上にはそろそろ限界が来ていると警告する。弥縫策に終わらない抜本的な食料政策を、ニッポン初の女性宰相は実現できるのか?

(河出書房新社 1045円)

「令和の米騒動」鈴木宣弘著

「令和の米騒動」鈴木宣弘著

 令和のコメ騒動とは言い得て妙だが、その原因はなにか。農協(JA)が主犯という見方は違うと本書はいう。政府はコメ不足を認めずに農協と流通機構が値をつり上げたと責任転嫁したが、「残念ながら、現在の農協にその力はない」と本書。コメ不足が深刻化して農家に直接買い付けにくる業者が増えた。彼らは農協よりも高値を提示して買いあさってゆく。つまり農協は買い負けているのだ。

 コメ需要の増加はインバウンド消費だといわれるが、これも本書は留保をつける。むしろ値上がりしたほかの食材に比して、相対的に安いコメに国内の消費者がシフトしたというのである。

 定説と思ったものはむしろ先入観もしくは政府のプロパガンダによる誤解ということになる。本書が指摘するように、コメ騒動の真の背景は、やはり政府の減反政策の行き過ぎだろう。減反でもコメの低価格化を阻止できず、「コメ農家を困窮に追い込んだ」と手厳しい。

 著者は元農水省の官僚。その後、九大、東大と研究職を歴任し、いまも東大で特任教授をつとめる。著者が現役官僚だったころは重要政策についての官邸会議は白熱したが、第2次安倍政権以後、「そんな仕組みは崩れた。経産省出身者が官邸を牛耳り、“経産省政権”と揶揄されるほど」になったからだ、と苦言を呈する。

(文藝春秋 990円)

「令和米騒動 日本農政失敗の本質」荒幡克己著

「令和米騒動 日本農政失敗の本質」荒幡克己著

 今回のコメ騒動についてはいち早く分析本が出版されたが、著者の立場によって主張やアプローチは異なる。著者は農水省勤務から学窓に転じた農業経済学者。海外での研究歴もあり、国際的視野が持ち味のようだ。著者は巻頭で、まずは冷静な議論をと呼びかける。

 コメは日本人にとって特別な食物だけに情緒的な反応も少なくない。また減反政策の是非はつきものだが、著者は類書の中でも批判は控えめ。全国のコメ産地を実地調査する著者によれば西日本には担い手が高齢化して荒れ果てた休耕地が目につくが、東日本では「豊かに実った稲穂が連綿と続く」風景が見られるという。

 またコメの生産では日本が世界一の技術水準と思われがちだが、実は状況は正反対。アメリカ、中国、韓国の稲作は収穫量も日本を上回り、技術的な進歩のスピードも驚くほど速い。「このままでは日本は世界の稲作進歩から取り残されてしまう」と危機感をあらわにする。

 アメリカで稲作が盛んなのは知られているが、中韓もとは知らない人も多いだろう。今年豊漁のサンマやイカを味わうにもコメは大事。心して学びたい。 (日本経済新聞出版 2750円)

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