タイトル総ナメ!オリ山本由伸の原点…「勘違いができる子」は高1の秋に覚醒した

公開日: 更新日:

オリックス・山本由伸物語(上)

 さらに勲章が加わった。15日、オリックス山本由伸(23)がパ・リーグMVPを受賞した。今季、18勝(5敗)、防御率1.39、206奪三振、勝率.783と投手4部門でタイトルを獲得。4完封を合わせると史上8人目の「投手5冠」を達成。沢村賞を含めタイトルを総ナメにした。2016年ドラフト4位で入団してから、わずか5年で球界屈指の投手に成長した右腕の原点を探った。

  ◇   ◇   ◇

 1998年8月17日、岡山県備前市で第2子(長男)として生まれた。姉との2人きょうだいとして育った山本は、幼少期から野球が身近にあった。父・忠伸さんは東岡山工業高時代、甲子園を目指した球児で、勤務先でも県代表として軟式野球の国体に出場。その試合を見学したこともある。小学1年の時、父がコーチをしていた地元の伊部パワフルズで本格的に野球を始めた。

 父のDNAを受け継いだのだろう。同チームで指導していた大饗利秀氏は、「由伸は運動神経が良くて、動きが俊敏でした。野球以外のスポーツをさせてもそこそこやれるような子。でも、どの競技よりも野球が好きだったようで。チームの主な活動日は火、木、土でしたが、それ以外の日も友達と野球ばかりしていたようです」と振り返る。

 小学生時代は捕手など主に野手としてプレーしたが、小学6年の時に出場した全日本学童軟式野球大会(神宮球場、世田谷区総合グラウンドなど)では投手としても活躍した。

「ニコッと笑って上手にかわす」

 本格的に投手をやり始めたのは東岡山ボーイズに所属していた中学1年の秋だった。同ボーイズの中田規彰監督が言う。

「入団時からセンスが良いなと思いつつも、背がそれほど高くない。投手は無理かな、当初はそう思っていたんです。しかし、キャッチボールの様子を見ていると、他の子より球の回転が奇麗だったし、沈まずに『スーッ』と糸を引くような球を投げていた。試しに投手をやらせたらコントロールも良かったんです。すぐに投手起用を決めました。チームにはエースがいたので、二枚看板ということでセカンドと併用しました」

 山本は誰に教わったわけでもなく、クイックをしたり、試合で突然、スローカーブを投げたりして指導者を驚かせた。「他の子がしないような工夫を自分で考えながらやる。遊び心がありました(笑い)」とは、中田監督だ。

 その一方で、誰よりも練習熱心の選手というわけではなかったという。

■「コラ! ヨシノブ!」

「一生懸命、がむしゃらにやるようなタイプでは……。要領よく手抜きをしていました。特に冬の筋トレが顕著でして(笑い)。あまり好きじゃなかったのかな。あの季節はグラウンドの至る所から『コラ! ヨシノブ!』という声が飛んでいた。でも、由伸は叱られたらニコッと笑って、上手にかわすんです。全ての能力が平均より上でしたが、当時はまだズバぬけたものはなかった。5点満点の五角形のグラフがあれば、全てが『4』みたいな感じです」(中田監督)

 中学3年の夏には全国大会に出場した。いくつかの高校から声がかかる中、山本は宮崎・都城高への進学を選んだ。

 都城高で監督を務めた恩師の森松賢容氏には、山本に心底惚れ込んだ理由があった。

■「良い意味で勘違いができる子」

 森松氏はその前年まで岡山県の作陽高でコーチを務め、同ボーイズと縁があった。

 山本の1学年先輩の選手を都城高へ受け入れることになり、関係者に挨拶するためグラウンドへ足を運んだ。

 そこで「ノーマーク」だった山本の姿に思わず目を奪われた。二塁でノックを受けていた様子を見て「あの子、めちゃめちゃ興味あります」とボーイズの代表に言った。森松氏がこう語る。

「身のこなしが上手だなとは思いましたが、突出して目立つというわけではありませんでした。ただ、とにかく楽しそうに野球をしていたんです。カッコつけたプレーをしたくなる年頃ですが、そんな様子は一切なかった。うまくなりたいという純粋な気持ちが伝わってきました。技術や実力ではなく、こんなにイキイキとプレーする子がウチにいてくれたらと。いくつかの高校から誘われていたようですが、直接、由伸に声を掛けるのは(高野連の規定で)アウトなので、代表に誠心誠意、思いを伝えました」

 実績や技術、将来性というより、野球に対するひたむきさに魅力を感じた。山本から入学の意思を伝えられたのは、1週間ほど後だった。

 森松氏は当初、山本を遊撃手として育てるつもりだった。が、初日の練習で考えが変わった。東岡山ボーイズの中田監督と同じく、キャッチボールの球質に目を見張るものがあったからだ。以降、投手と三塁手を兼務させることにした。森松氏が言う。

「由伸は良い意味で『勘違いができる子』でした。私は部員に毎年、色紙に目標を書かせます。由伸は1年生の時から『プロ野球選手』と書いていた。入学当初の球速は123~124キロ程度だったのにです。高校生にもなると現実を見てプロを諦める子もいますが、『目指せば、ひょっとしたらなれるかもしれない』と、ひたむきに努力できる。半年後の秋には球速が140キロくらいまでグンと伸びた。その頃ですかね、プロに行けるかもしれないと思い始めたのは」

 ひたむきに夢を追いかける山本に、野球部の1年後輩である福田尚輝さんはあこがれのまなざしを向けていた。 =つづく

▽山本由伸(やまもと・よしのぶ)1998年8月17日、岡山県備前市生まれ。伊部小、備前中を経て、都城高(宮崎)へ進学。甲子園出場経験はないが、2016年ドラフト4位でオリックスに入団。プロ2年目まで中継ぎを務め、3年目に先発転向。19年最優秀防御率、20年最多奪三振。今季は投手部門で4冠、沢村賞、MVPを受賞した。身長178センチ、体重80キロ。右投げ右打ち。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希の「豹変」…記者会見で“釈明”も5年前からくすぶっていた強硬メジャー挑戦の不穏

  2. 2

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    セクハラだけじゃない!前監督が覚悟の実名告発…法大野球部元部長、副部長による“恫喝パワハラ”激白180分

  5. 5

    仁義なき「高校野球バット戦争」…メーカー同士で壮絶な密告合戦、足の引っ張り合い、広がる疑心暗鬼

  1. 6

    なぜ大谷はチャンスに滅法弱くなったのか? 本人は力み否定も、得点圏での「悪癖」とは

  2. 7

    大谷がいちいち「大袈裟に球を避ける」のは理由があった!弱点めぐる相手投手との暗闘の内幕

  3. 8

    西武・渡辺監督代行に貧打地獄を直撃!「ここまで打てないほど実力がないとは思ってない」とは言うものの…

  4. 9

    朗希の“歯車”は「開幕前からズレていた説」急浮上…メジャー挑戦どころじゃない深刻事態

  5. 10

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    野呂佳代が出るドラマに《ハズレなし》?「エンジェルフライト」古沢良太脚本は“家康”より“アネゴ”がハマる

  3. 3

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  4. 4

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

  5. 5

    ロッテ佐々木朗希にまさかの「重症説」…抹消から1カ月音沙汰ナシで飛び交うさまざまな声

  1. 6

    【特別対談】南野陽子×松尾潔(3)亡き岡田有希子との思い出、「秋からも、そばにいて」制作秘話

  2. 7

    「鬼」と化しも憎まれない 村井美樹の生真面目なひたむきさ

  3. 8

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 9

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方