元川悦子
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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

松井大輔はサッカー界の大谷翔平か? J3とフットサルの「二刀流マネジメント術」

公開日: 更新日:

 2022-2023シーズンのFリーグ(日本フットサルリーグ)1部が6月18日に開幕した。日本代表のファンタジスタとして活躍したYSCC横浜松井大輔がバサジィ大分戦に出場し、フットサルとサッカーの「二刀流」に本格的に踏み出した。

「今季はJ3にも出ているんで、両方を行ったり来たり。開幕戦前は15日の練習と17日にセットプレーの確認だけをこなして試合に出ました」と彼は大分戦後、超過密日程の新シーズン入りだったことを明かした。

■早く初心者マークを外したい

 この日の出場は、前半が2回のプレー機会で計2分37秒、後半が1回のプレー機会で1分23秒の合計3分6秒間。惜しくもシュートゼロに終わった。

 チームは4-0で快勝したが、鳥丸太作監督は「彼にはもっと攻撃的特徴を出してほしい」とエールを送る。「早く初心者マークを外したい」と本人も新たな挑戦に意欲満々だ。

 2021年10月8日の湘南戦でフットサルデビューを果たした松井。この年の終盤は、サッカーとは似て非なるフットサルに専念していた。

 しかし、2022年を迎えるや否や、J3参戦を決意。1月下旬からサッカーに軸足を置きながら、3月12日のJ3開幕・FC岐阜戦に備えた。

 序盤は小さいケガが重なり、ベンチ外が続いたが、4月16日の長野戦でJ3デビュー。2010年南アフリカW杯日本代表の経験値を彼なりに還元しようと取り組んでいた。

チーム内序列が急上昇

 だが、肝心のYS横浜がシーズン頭から最下位に低迷。今季就任した仲田健二監督が5月頭に休養を余儀なくされた。

 5月中旬までの期間は三枝寛和コーチが代行監督を務め、INAC神戸を辞したばかりの星川敬新監督が25日の北九州戦からチーム引き継ぐ形になった。

 この一連の経緯の中で松井の序列が急上昇。「中盤のキーマン」と位置付けられるようになる。

 5月19日の相模原戦、28日の北九州戦、6月4日のいわき戦で3試合連続スタメンに抜擢されるなど、チームに不可欠な存在になっていったのだ。

 彼自身は当初、6月の今季Fリーグ開幕に向けて5月中旬以降はフットサルに集中するつもりだったが、そうもいかなくなった。

 午前6~8時のフットサルの練習と午前9~11時のサッカーの練習を掛け持ちする日も出てきて、41歳のベテランは肉体的な限界との戦いを強いられたのだ。

本音は「どっちもやりたい」

「体が持つんだったらどっちもやりたいのが本音ですけど、負荷が高いし、ケガが心配。40代になればすぐに体が悲鳴を上げますからね(苦笑)。そこで月・水・水がフットサル、木・金がサッカーというのを基本にしながら、バランスを取りつつやるようになりました」と松井は自分なりの二刀流マネージメント術を模索した様子だ。

 サッカーに関しては、ご存じの通り、長年のキャリアがある。

 星川監督とも、2017年のオドラ・オポーレ(ポーランド)在籍時に3カ月間、同じアパートに住んだ間柄。指揮官のサッカー観を十分に理解しているため、準備期間が短かったとしても、試合ですぐに表現できる状態だという。

「でも、フットサルの方は簡単じゃない。2021年10~12月のリーグ戦3試合に出ただけで、戦術理解も連携面もまだまだです。今季は監督が鳥丸さんに代わったし、フットサル日本代表GKの矢澤(大夢=28)やベテランの芝野創太(33)が移籍してきて、新しいチームになっている。僕も周りと融合しないといけないんで、ホントにやることが多いです」と松井は頭を悩ませる。

何気ない喋りがボールに伝わる

 それでも、鳥丸監督は同じ1981年生まれ。何でも気さくに話せる関係を構築してくれている。

 しかも松井の非凡なセンスを高く評価。「もっと彼を使いたい」と熱望している。

 大分戦の同じセットに出場した芝野も「松井さんはコミュニケーションをすごく取ってくれるので有難い」と前向きに言う。周囲の力強いサポートを受けながら、松井はフットサルで新境地を開拓しつつあるようだ。

「実は芝野たちとは大分戦前日にも食事に行って意思疎通を図りました。『何気ない喋りがボールに伝わる』というのはカズさん(三浦知良=JFL鈴鹿)も言っていたこと。少なからずプレー(の好連係)にも出たかなと思っています(笑い)」

「今後は出場時間も伸ばしたいし、シュートも打ちたい。他のメンバーは前半だけで2分間を4回出るペースでやってますけど、自分は1分半で乳酸が溜まってしまう(苦笑)。瞬発力が必要なんでサッカーとは全然違います。早くそのフィジカルレベルに引き上げたい。まだFリーグでは得点も奪えていないんで、早く初ゴールを取りたいです」と背番号22は少年のように目を輝かせる。

まずは自分が楽しむことが一番

「フットサルとサッカーの二刀流というのは、とても難しいこと。体育館と天然芝(とピッチ)も違えば、ボールとゴールのサイズも異なる。競技人数も違いますし、使う筋肉や疲労箇所も変わります。そのうえで、彼はチーム事情もあってフットサルの十分なトレーニングを積めないわけですから、僕としては努めて慎重に扱わなければいけない。当面はFリーグの試合を練習だと思って経験を積み重ねてほしい。細かい戦術やセットプレーなども積極的にすり合わせてもらいたい」

 こう語る鳥丸監督の力強い後押しを受け、松井は当面、フットサルに邁進する覚悟だ。 

 7月以降もJ3に駆り出されるケースもないとは言い切れないが、本人としては「どういう状況でも、まずは自分が楽しむことが一番」と割り切っている。

「自分がエンジョイできて、見ている人が『松井は今日も頑張ってるんだ』と思ってもらえたらそれでいい。41歳のおじさんがイケてるところを見せたいですね」

 二刀流と言えば、大リーグのエンゼルス・大谷の代名詞だがーー。

 爽やかな笑顔をのぞかせたサッカー版・二刀流プレーヤーの今後が楽しみだ。

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