著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

米国ならでは? メジャーリーグで不正投球が完全になくならない3つの理由

公開日: 更新日:

 特に、打者の一振りで逆転満塁本塁打を打たれて敗戦投手となり、結果的に年俸の査定にも影響するとなれば、投手にとって相手を抑えるためにあらゆる努力を行うのは、たとえそれが規則上不正であるとしても、当然の試みとなる。そして、このとき、倫理や道徳は不正投球の問題の枠外に置かれているのである。

 あるいは、通算314勝を挙げて野球殿堂入りするだけでなく、「不正投球を行っているのは公然の秘密」と言われたゲイロード・ペリーでさえ、実際に不正投球を理由に退場処分を受けたのは22年間の選手生活の中で1982年の1回だけであった。これは、摘発の難しさだけでなく、実力がなければその場しのぎの不正投球だけで300勝を達成できるものではないことを示している。

 今回不正投球を行ったとして10試合の出場停止処分を受けたマックス・シャーザー(メッツ)も、どの程度の頻度で不正な球を投げていたのかは不明である。また、不正投球を行っていなかったとしても現代の大リーグ屈指の投手であることに変わりはない。

 その意味で、シャーザーを巡る一件は、不正投球の根深さだけでなく、不正投球への需要の大きさを物語っているのである。

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