著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

米国ならでは? メジャーリーグで不正投球が完全になくならない3つの理由

公開日: 更新日:

「スピット(唾)」「エメリー(やすり)」「カット(切れ目)」など、日常的な語彙が用いられていることは、野球にとって不正投球が縁遠い存在ではなく、身近な出来事の一つであることを表している。

 それでも、1920年に規則改正が行われ、球に異物の付着や形状の変化を加えるあらゆる行為は不正とされた。しかし、各球団はスピットボールを投げる選手を2人まで指定できたという事実は、「スピットボールを一律に禁止すると大きな影響を受ける選手がいるため」という理由とともに、当時の選手にとって不正投球は珍しくないものであったことを教えている。

 しかも、規則改正以前にスピットボールを投げていた投手は規制の対象外となったのだから、球界の不正投球に対する意識も決して高いものではなかった。規制というにはあまりにも緩やかであった球界の対応は、「見つからなければ問題ない」という意識を生み出す原因の一つとなった。

 それでは、どうして不正投球に対する球界の対応は厳しさを欠くのだろうか。

 主たる理由として挙げられるのは以下の3点である。規則上禁止ではあるものの、不正投球は投手にとって相手打者を抑えるための工夫の一つであること、選手そのものの実力が高くなければ不正投球によって優れた成績を残し続けられないこと、さらに不正投球を確実に見極めるのが容易ではないこと、といった点である。

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