谷繁元信の技術力はコーチ目線でも勉強になり、小林誠司の指導にも生きた
捕手コーチとして勉強になった男が、当時の正捕手・谷繁元信である。現役時代、年間盗塁阻止率リーグトップをマークすること計5回。横浜に在籍していた01年には阻止率.543という驚異的な数字を記録した。
まず「際どいゾーンに来たボールをストライクと判定させる」捕球技術、「フレーミング」がうまい。二塁盗塁阻止の際、捕球時の右足の位置から送球時の右足の設置位置が近く、そして素早い。重心移動が少なく、球を捕球し、握りかえてリリースするまでが0.57~0.58秒。これはプロでもトップクラスの速さである。特に強肩というほどではなくても、コントロールが抜群に良く、野手が捕りやすい球の質だった。
動きが小さいため、打者に邪魔されない。動きが小さくても投げられる秘密は「捻転動作」にある。骨盤を切り返し、ひねるのがうまい。捕ってからの速さと針の穴を通すコントロールによって盗塁を刺していた。
巨人の小林誠司は鉄砲肩を誇るが、右足を大きくステップするため、強い送球はできても、打者にバスターやレイトスイングなどで邪魔をされるケースも出てくる。矢のような送球は見栄えはいいが、コントロールが安定しないというデメリットもある。私が巨人のバッテリーコーチの時は、谷繁を参考に小林を指導した。今ではムダな動きが少なくなり、盗塁阻止率も上がっている。