佐野海舟〈後編〉米子北高で培った“人間力”とサッカーIQ…森保ジャパンの中軸へ駆け上がった理由(米子北高サッカー部総監督・城市徳之)

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MF佐野海舟(ドイツ1部マインツ/25)

 北中米W杯の事前キャンプ地・メキシコのモンテレイで取材対応した佐野は「フル出場に向けてやれることを全力でやる」と頼もしいセリフを口にした。鳥取・米子北高で2000年から15年、監督としてサッカー部を強豪に育て上げ、16年から総監督を務める城市徳之・校長に引き続いて佐野について聞いた──。

  ◇  ◇  ◇

──米子北高で進化した部分はどこでしょうか。

「中学時代は技術重視のクラブでプレーしてましたが、米子北高はロングボールを使った攻撃が多いチームですし、フィジカルを鍛え上げて前線から厳しくプレスもかけていくし、奪ったボールを近くの味方に付けるだけではなく、前線のトップに素早く当てることも要求されます。海舟は、そんな米子北のやり方に戸惑ったり、変に葛藤することもなく、自身の持ち味として取り込むことのできる選手でした。もともとサッカーIQは高いし、理解するスピードも早かった。課題に向き合い、練習で繰り返して身に付けることに長けている選手でした」

──意外にも佐野は年代別代表とは無縁だった。

「彼がプロになってから『海舟みたいな<縁の下の力持ちタイプの選手>が日本代表に選ばれ、世界を相手にプレーしてくれたらうれしいよね』とみんなで話していたものです。ボールをきっちりと回収して味方に預けるだけでなく、機を見て攻撃に参加してスルーパスを繰り出す。高校時代に足りなかった部分を身に付け、強度の高い欧州でも立派にプレーしている。本当にうれしく思います」

──代表のキャップ数が「9」ながら、佐野は25年10月のブラジル戦に先発。3月の聖地ウェンブリーでのイングランド戦が代表12試合目。キャリアは浅くとも重要な試合に起用され、2試合とも歴史的な勝利の原動力となり、そしてW杯メンバーを勝ち取りました。

「想定外のスピードで駆け上がり、今回のW杯メンバーに選出されたことに驚いています。初めて海舟に出会ったころ、こんなにも急激な成長曲線を描くとは、正直に言って想像はできませんでした。ブラジル戦、イングランド戦で感心したことがあります。それは相手が強豪であっても、必要以上に緊張しないで平常心を保ち、とても安定したメンタルで戦っていたことです。素晴らしいプレーを決して目立つことなく、淡々とプレーする姿を『高校時代から変わっていないな』と思いながら見ていました」

「プロになってもサッカーIQの高さは際立っていた」

──米子北高時代からプロ志望だったのですか?

「そうですね。高校を卒業したらプロに行きたいと考え、それで米子北高を選んだみたいです。当時J2の町田から声が掛かり、念願叶ってJリーガーになることができました。1年目から試合には出ていましたが、2年目にランコ・ポポビッチ監督体制になって、多くの試合で使われるようになったので私自身、とてもうれしく思っていました。余談ですが、当時のポポビッチ監督の通訳は米子北高サッカー部のOBなんですよ。海舟にとっても、町田入りは良かったと思います。23年からJ1の鹿島に移籍してプレーするようになりました。海舟の凄いところは、町田でも鹿島でも1年目からチームのコンセプトを理解し、その上で自分のストロングポイントをどうすれば発揮できるのか、ちゃんと考えながら実践し、チームの主力に短期間で成長していくことです。繰り返しになりますが、プロになってもサッカーIQの高さは際立っていましたね」

──鹿島で1シーズン半プレーし、24年夏にドイツ1部マインツに完全移籍することになった。

「鹿島移籍、ドイツ移籍に関して事前に相談はありませんでしたが、ちゃんと報告をしてくれました。海舟が鹿島に移籍した1年目、G大阪でプレーしていた昌子が古巣の鹿島に戻ることになって1シーズン、チームメートとしてプレーすることになり、とても感慨深いものがありました。昌子は、24年シーズンから黒田剛・前青森山田高監督率いる町田でプレーすることになるのですが、黒田監督は、実は大阪体育大4年の時の1年なんですよ。町田も頑張ってほしいと思っています」

──米子北高で佐野も昌子も「人間力」をアップさせたことが、日本代表としてW杯でプレーすることにも繋がった。

「時代も変わって指導法や関わり方も変化してきましたが、ピッチの外の日常生活においても『規律・マナー・エチケット』を大事にしながら<人間力>をあげていくことが、高校生としても大事なことですし、サッカー選手にとっても不可欠な要素と思っています。今後も米子北高サッカー部としての軸はぶらさずに第二の昌子、第二の佐野を育てていきたいと思っています」

──佐野と入れ替わりで米子北高サッカー部に入ってきた弟の航大(22=岡山を経て23年8月からNECナイメヘン/オランダ1部)も代表候補でしたが、残念ながら発表されたW杯メンバー26人には入りませんでした。

「航大は、とにかく攻撃が大好き。相手ゴール前で豊富なアイデアを生かせる選手です。入学した時は守備の意識は低かったですが、中村真吾監督がいろいろなポジションに置くことでプレーの幅が広がり、そして守備の重要さも理解して成長していきました。海舟と航大がJリーグで敵味方に分かれて戦っている試合を見てみたいと思っていましたが、25年(6月)のW杯アジア最終予選のインドネシア戦で2人が同時出場し、とても誇らしく思いました。W杯で海舟が相手ボールを奪って攻め上がり、航大が絶妙な動き出しからボールを受けてシュート──というホットラインは残念ながら今回は見られませんが、海舟は弟の無念の思い、鳥取と岡山の方々の応援、米子北高の後輩たちの声援、学校関係者の期待などを感じながら自分の持ち味を遺憾なく発揮し、日本代表の躍進に貢献してくれたら本当にうれしいです」

(聞き手=絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽さの・かいしゅう 2000年12月30日生まれ、25歳。岡山・津山市出身。小~中は地元クラブのFCヴィバルテでプレーした。鳥取・米子北高在学中の3年間、全国高校サッカー選手権と全国高校総体に出場。高校を卒業した19年に当時J2の町田に加入。23年にJ1の鹿島に引き抜かれた。24年夏にドイツ1部マインツに完全移籍。欧州でもデュエル勝利数、インターセプト数、走行距離などでトップ級の数字を残している。昨シーズン、今シーズンと連続して全試合先発出場を達成した。

▽じょういち・のりゆき
1967年5月14日、59歳。鳥取・米子市出身。米子西高から大阪体育大に進んで在学中、関西学生リーグ優勝を経験。鳥取県少年、成年の国体選手としても活躍。卒業後に米子北高サッカー部のコーチ。2000年から監督として采配をふるい、09年には元日本代表DF昌子源(町田)を擁して高校総体準優勝。16年にコーチの中村真吾が監督となって以降、総監督という立場でチーム関わっている。25年4月に米子北高の校長に就任した。

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