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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

堂安律〈後編〉「律には“強い日本代表の姿”を育成年代の選手に見せてほしい」(元ガンバ大阪ジュニアユース監督・梅津博徳)

公開日: 更新日:

FW堂安律(ドイツ1部フランクフルト/27)

 日本代表10番の堂安律(フランクフルト)は2017年夏に初の海外挑戦に踏み切り、オランダ、ドイツの5クラブで9シーズンをプレー。卓越した国際経験を武器に2度目となる北中米W杯に臨む。「今の日本代表は本当に強いと思います」としみじみと語る恩師・梅津博徳(現横浜F・マリノスジュニアユース監督に聞いた──。(【前編】からつづく)
 
  ◇  ◇  ◇
 
 ──堂安選手は高2になった2015年にはトップチームでプレーするようになりました。

「当時のトップの監督は長谷川健太さん。1月のキャンプから呼んでくれたんですが、ユースの監督だった自分は『もう少し下で苦労してもよかったのではないか』とは思いましたが、僕自身の同期だった稲本(潤一=川崎FRO)も高校生からJリーグでプレーしていましたし、家長(昭博=川崎)、宇佐美(貴史=G大阪)、井手口(陽介=神戸)もそうだった。ガンバはそういうクラブだったので、見守ることにしました」

 ──早いうちからトップに昇格しても、試合に出られず苦しむ選手は少なくない。

「(家長や宇佐美をトップに引き上げた)西野朗さん(元日本代表監督)も健太さんも、まずは鼻をへし折るところからスタートしていると思います(笑)。律の場合はしっかりと自分を持っていますし、調子に乗ってしまうというリスクはないと思いました。仮に高2の途中に(トップから)ユースに戻ることになったとしても、1つ上の初瀬(亮=G大阪)たちが『何やねん、お前』というような扱いをすることはないという確信はありました。過去にはトップに参加して戻ってきた時、良い状態ではなかった選手を外したこともありましたから、律が良くなかったら同じように厳しくしようと考えていました」

 ──実際に戻ってくることはあったんですか?

「2015年12月の高円宮杯プレミアリーグU-18チャンピオンシップ直前に戻ってきたので、律が1点を取ってチームを優勝させるという理想を描いて起用しました。が、鹿島ユースに0-1で負けてしまった。彼自身も今ひとつでした。<怪物>と言われた家長や貴史などに比べると『まだまだだな』という印象でしたね。本人も挫折感を味わったと思います」

 ──その後、2016年はU-23での活動がメインで、2017年にトップで試合に出るようになりました。長谷川健太さんの下での変化はどうでしたか?

「律は今、守備のハードワークができるアタッカーとして評価されていると思いますけど、守備強度や激しさを出せるようになったのは、健太さんのおかげなのではないかと僕は感じます。個性を伸ばすというガンバのよさとひとつのボールを奪い合うことにこだわる健太さんの良さが融合した時期が、あの時だったような気がします」

「11人の中の1人として機能しない、という現実を突きつけられた」

 ──そして2017年U-20W杯に参戦した直後、オランダへ移籍しました。

「大地も律もそうなんですけど、『僕のサッカー人生は自分の思い描いた通りになる』と考えていたと思います。つねに上を目指して突き進んでいけるマインドの強さがあったのは間違いないですから。サッカーの大原則は、点を取ること。そこから逆算してどうするかを我々も考えていましたけど、律もその道筋をずっと模索していたはず。ゴールに直結する仕事をすることを考えながら、異なる環境で着実に成長していったと思います」

 ──欧州最初のフローニンゲンでは順調なステップを踏んでいた堂安選手も、2019年夏に赴いたPSV時代は試合に出られずに苦しみました。

「オランダのサッカーは役割がハッキリしていて、自分の特徴だけ出せばいい、というわけではないと思います。律がその領域に達していたら良かったのですが、当時はそういう扱いではなかった。11人の中の1人として機能しない、という現実を突きつけられたのかなと見ていました。どうしたらチームの一員としてプレーしつつ、自分の強みを出していくかを模索したあの時期は貴重だったと思いますね」

 ──PSVからビーレフェルトへレンタル移籍し、再びPSVに戻ってきた後、彼はドイツで成功をつかみました。

「リーグの特徴や国民性を含め、ドイツは律に合っているのかな、と個人的には感じます。特にフライブルク時代は、日本人をリスペクトして能力を生かしてくれる環境にも恵まれたという気がします。今のフランクフルトでは難しい状況に直面していますが、彼はこれまでも挫折を乗り越えてきた人間。多少の壁にぶつかっても成長できるはずだと信じています」

 ──日本代表での堂安選手のプレーを最近、生で見られたことは?

「僕がまだガンバにいた2018年か19年ですね。律が日本代表に定着したばかりの頃だったと思います。昨年はブラジル戦やボリビア戦が東京でありましたが、F・マリノスジュニアユースの指導があるので行けていません(笑)。もちろん北中米W杯も日本で応援することになりますが、今の日本代表は本当に強いなとしみじみ感じます。ガンバ時代は、指導している選手を年代別代表に行かせたい、とはあまり思いませんでしたが、今はF・マリノスの選手をあの舞台に送り出してみたい、と思います。大地や律には、強い日本代表の姿を今の育成年代の選手たちに見せてほしい。よい結果を期待しています」

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽堂安律(どうあん・りつ) 1998年6月16日生まれ。兵庫・尼崎出身。中学進学時にガンバ大阪ジュニアユースに入団。12年に史上初のU-15全国3冠を達成した。ユース時代の高校2年でトップ登録されてJリーグデビュー。17年にオランダに移籍。22年にドイツ・フライブルグに完全移籍。25年8月に強豪フランクフルトに引き抜かれた。各年代別代表に選ばれ、18年8月に日本代表に初招集された。22年W杯カタール大会ベスト16。北中米W杯でエースナンバー「背番号10」を着けて戦う。

▽梅津博徳(うめず・ひろのり) 1979年5月18日生まれ、47歳。埼玉県出身。ガンバ大阪の下部組織でユースまでプレー。同期に日本代表MF稲本潤一(アーセナル、ガラタサライ、フランクフルトなどでプレー。現川崎FRO)、DF新井場徹(G大阪、鹿島、C大阪でプレー)らがいる。近畿大卒業後、G大阪の下部組織で指導者人生をスタート。MF井手口陽介(リーズ、セルティックなどでプレー)を日本代表に育てるなどキャリアを磨いた。19年にはG大阪ジュニアユース監督として高円宮杯U-15決勝を制し、チームを7大会ぶりの優勝に導いた。翌20年に横浜Mジュニアユースのコーチングスタッフ入り。現在ジュニアユース監督。

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