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森雅史サッカージャーナリスト

佐賀県出身。久留米大学附設高から上智大。サッカーダイジェスト編集部を皮切りに多くのサッカー誌の編集に関わり、2009年の独立後も日本代表の国内外の活動に密着取材を続けている。決め細やかな取材と精緻な筆致に定評がある。日本蹴球合同会社代表。森保監督との共著「『森保ノート』の真実。」(幻冬舎)が話題を集めている。

(1)「ドーハの結末は『もっと努力しなさい』というサッカーの神様からの忠告だった」

公開日: 更新日:

当時の日本代表に「最も欠けていたピース」

 1988年1月のUAE戦で日本代表デビューを果たしましたが、横山賢三監督率いる日本代表に初招集された際、私は最終ラインのセンターバック(CB)にコンバートされました。

 日産時代には経験したことがなかったポジションでしたが、これまでのサッカー人生で培った「中盤でのゲームメイクの視点」「守備に対する執着心」を持ち味としながら、ディフェンスラインの統率に生かしました。メキシコ五輪で銅メダルを獲得した横山監督の戦術は、非常に先進的なものでした。当時、選手たちの技術や理解が追いつかない部分もありましたが、日本サッカーが「世界で勝つにはどうすればいいのか?」という方向に大きく舵を切った時期でした。

 1992年3月、オランダ国籍のハンス・オフト監督(78歳)が、日本初の代表外国人監督に就任すると、日本代表は劇的な変化を遂げました。

 彼は、基本的な「トライアングル」という概念を徹底させました。

 当初、私たちは「そんな(シンプルな)ことは知っている」と高を括っていましたが、オフト監督は「『知っている』と『できる』ことは違う」と一喝しました。

 その言葉通りでした。

 実戦で正確な三角形を作り続けることは容易ではありませんでした。しかし、この極めてシンプルな規律こそが、当時の日本代表に最も欠けていたピースだったのです。

 ハンス・オフト監督に率いられた日本代表は快進撃を続け、1993年10月に中東カタールの首都ドーハに乗り込み、ワールドカップ・アメリカ大会のアジア最終予選に臨んだ。最終戦のイラク戦は試合終了間際までリードを守り、誰もが初のワールドカップ出場を手繰り寄せたと思った。しかし、無情にもショートコーナーキックから同点ゴールを許し、日本代表の夢は土壇場でついえた。

「ドーハの悲劇」が起こったピッチに主将として立っていた柱谷は、その場に崩れ落ちる仲間たちの姿を、ただ呆然と見つめるしかなかった──。

 私は、今でも「サッカーの神様」は存在すると信じています。ドーハでのあの結末は「日本はもっともっと努力しなければならない」という神様からの忠告だったと受け止めています。

 日本サッカーの歴史には、その時代ごとに「ベースを作る年代」と「飛躍する年代」が存在します。

 私たちの先輩方は、アマチュアという厳しい環境の中で「勝つために何が必要か」という問いを、宿題として私たちに残してくれました。

 私たちはその宿題をひとつずつクリアし、そして次世代に向けて新たな宿題を残してきました。

 今の選手たちが世界を舞台に思う存分ファイトできるのも、過去から引き継がれた宿題を明確にし、宿題の答えを導き続けてレベルアップしていった結果です。

 この正常進化のサイクルの継続性こそが、日本サッカーの真の素晴らしさであると感じています。これからも日本サッカーは、さらなる高みへと昇っていくことでしょう。(【第2回】へつづく)

(聞き手=森雅史/日本蹴球合同会社、絹見誠司/日刊ゲンダイ)

▽はしらたに・てつじ 1964年7月15日生まれ、京都市出身。京都商業から国士舘大。87年に日産自動車(現横浜M)入り。J開幕前の92年にヴェルディ川崎(現東京V)に移籍した。88~95年に日本代表として国際Aマッチ72試合に出場。引退後はJ1の札幌、東京V、J2の水戸、J3の鳥取、北九州、JFLの八戸で監督を歴任。2018年3月に花巻東高校サッカー部のテクニカルアドバイザーに就任(~2025年)。25年12月に千葉・明海大サッカー部(千葉県大学サッカーリーグ1部)監督に就任した。

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