「星を賣る店」クラフト・エヴィング商會著

公開日: 更新日:

■アート・デザイン・文学が融合した不思議な世界

 社名のような著者名だが、その正体は小説執筆から装丁などのデザインワークまで幅広く活動する夫婦ユニット。本書は、自著に登場する架空の品々を、さまざまな手法で具現化した作品を、セレクトショップ「クラフト・エヴィング商會」が仕入れた「商品」として紹介するという凝った趣向のアートブックだ。

 例えば、商品番号5005番「稲妻の先のところ」という作品。透けた袋の中に黒い棒状の物体がうかがえる。説明書きによると、「『稲妻捕り』の名手によって捕獲された新鮮な稲妻の、その先のところ」とのこと。「命をとられない程度の甘い電気がジリジリと感じられ、体内の『嫌なもの』を焦がしてくれる」らしい。

 古代エジプト人が魂の重さを量るときに使った羽の名前「Maat(マアト)」の名を冠したお菓子の箱は、「箱の中に、魂のごとき菓子の『気配』だけがある」のだそうだ。

 その他、小津安二郎監督の映画の中に登場する架空の洋菓子店「ルナ」の包装紙や、のぞくと視線が地球を一周して自分の背中が見える「望永遠鏡」、いつでもどこでも、見たくなったら、火をつけて煙を吸えば、脳内のスクリーンに映画が投影される「シガレット・ムーヴィー」、そして、「魂の剥製に関する手稿」など、その題名からして怪しくも興味をそそられる「品々」が並ぶ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」