「星を賣る店」クラフト・エヴィング商會著

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■アート・デザイン・文学が融合した不思議な世界

 社名のような著者名だが、その正体は小説執筆から装丁などのデザインワークまで幅広く活動する夫婦ユニット。本書は、自著に登場する架空の品々を、さまざまな手法で具現化した作品を、セレクトショップ「クラフト・エヴィング商會」が仕入れた「商品」として紹介するという凝った趣向のアートブックだ。

 例えば、商品番号5005番「稲妻の先のところ」という作品。透けた袋の中に黒い棒状の物体がうかがえる。説明書きによると、「『稲妻捕り』の名手によって捕獲された新鮮な稲妻の、その先のところ」とのこと。「命をとられない程度の甘い電気がジリジリと感じられ、体内の『嫌なもの』を焦がしてくれる」らしい。

 古代エジプト人が魂の重さを量るときに使った羽の名前「Maat(マアト)」の名を冠したお菓子の箱は、「箱の中に、魂のごとき菓子の『気配』だけがある」のだそうだ。

 その他、小津安二郎監督の映画の中に登場する架空の洋菓子店「ルナ」の包装紙や、のぞくと視線が地球を一周して自分の背中が見える「望永遠鏡」、いつでもどこでも、見たくなったら、火をつけて煙を吸えば、脳内のスクリーンに映画が投影される「シガレット・ムーヴィー」、そして、「魂の剥製に関する手稿」など、その題名からして怪しくも興味をそそられる「品々」が並ぶ。

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