著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「ロバのスーコと旅をする」高田晃太郎著

公開日: 更新日:

「ロバのスーコと旅をする」高田晃太郎著

 旅をしてあとに残るのは、屋台のおばちゃんとの何げない会話やバスターミナルにいた猫の記憶だ。世界を知りたいと思って出かけるけど、結局拾ってくるのはカケラだけ。本も似たようなもんで「すごい本を読んだ!」と興奮しても肝心なことはすぐ忘れて、ささやかな断片のエピソードだけがずっと残る。そんな頼りない読書スタイルですが、本で世界を旅していきます。よろしくお付き合いくださいませ。

 初回に取り上げるのは、風変わりだけど読み応えたっぷりの紀行文。新聞記者をしていた青年が会社を辞めて放浪の旅に出る。そこまでは類型がありそうだけど、著者が選んだのはロバと共に歩く旅だからぶっ飛んでいる。

 まずいいロバを探して買い求めてから旅がスタート。相棒となったロバの背に荷を積み、連れ立って野を行き山を行くのだ。おいしい草を見つけるとロバはいきなり食事を始める。かわいいメスがいると恋に身もだえする。そんなマイペースなロバとの旅。なんて手間のかかる、なんて優しくて自由な地球の歩き方だろう。

 しかし、本書から吹いてくるのはほのぼのした風だけではない。たとえばイランの人はロバ連れで歩く日本人にとても親切だ。お茶を飲んでいけ、メシを食っていけ、泊まっていけと声がかかる。でも日本人と顔立ちが似ているアフガニスタン人(ハザラ人)に間違えられると石を投げられる。イランには大量のアフガニスタン難民が流入して社会問題になっているのだ。あぁ、相手を属性で値踏みするのが人間だ。自分も人間だからうなだれる。ロバはそしらぬ顔で風に吹かれている。

(河出書房新社 1782円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ホワイトソックス村上宗隆が「ゴミのような時間の本塁打」を量産する根拠

  2. 2

    全国模試1位の長男が中学受験、結果は…“ゲッツ‼”ダンディ坂野さんに聞いた 子への接し方、協力の仕方

  3. 3

    筑波大学の2次募集が受験生と業界で話題 「欠員1人」わざわざ補充のナゼ…どんな人が合格する?

  4. 4

    前田敦子“アンダーヘア透け疑惑”写真集が絶好調! トップ張った元アイドルの生き様を女性が強く支持

  5. 5

    鈴木農相「おこめ券 評価された」は大ウソ…配布したのは全国約1700自治体中たったの「29」

  1. 6

    「アッコにおまかせ!」最終回によぎる不安…準レギュラー陣全員で和田アキ子を支え迎えるフィナーレ

  2. 7

    大阪・和泉市の制度改革「初任給日本一」が生んだ3つの相乗効果 採用試験は競争率が約50倍に

  3. 8

    Wソックス村上宗隆にメジャーOB&米メディアが衝撃予想 「1年目にいきなり放出」の信憑性

  4. 9

    セクハラ寸前でも拍手喝采!R-1準優勝ドンデコルテ渡辺銀次の“業界評価”急上昇で「中年のカリスマ」となるか?

  5. 10

    広瀬アリス“炎上投稿”で赤西仁との結婚は「最終局面」へ “推しの結婚は全力で喜ぶべき”と持論展開