「日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?」田中康弘著
■日本人は肉食民族だった!
農耕民族である日本人は、米や野菜ばかりを食べてきた民族と思われがちだが、実は古くから獣を狩って食べてきた、立派な肉食民族なのだ。
田中康弘著「日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?」(枻出版社 1500円)では、日本の最北端から最南端まで、今も各地に残る狩猟の様子と肉食文化について、多数の写真とともに紹介している。
沖縄県の西表島では、“カマイ”と呼ばれる琉球猪を狩り、食べる文化が受け継がれている。猟は竹と木で作られた罠を地面に埋め込む罠猟が基本で、これをカマイが踏み込むとワイヤが引き上げられて固定される。ほとんどの罠が猟師自身の手作りだ。カマイの大きさは10~30キロほどで、食べる直前まで生かしておき、解体の際に喉元から刃物を入れて一気に心臓付近の動脈を切って血を抜いてしまう。短時間で血を抜かないと、腹腔に血がたまり肉質に悪影響を及ぼすためだ。
次に、強い炎で全身をあぶる。これは、カマイの剛毛を焼き切るためだ。体は黒焦げになるが、表面を刃物とタワシでガリガリと削ると、生きていた頃の見た目からは想像もできないような白く美しい脂肪に包まれた体が姿を現す。カマイは頭を落としてから背中を開き、薄桃色のうまそうな肉の塊に解体していく。西表島の食べ方は独特で、何とどの部位でも刺し身で食べる。ロースでもタンでも、表面を火でさっとあぶるだけ。カマイはジストマなどの寄生虫の危険があるといわれているが、西表島ではこれが常識で、抜群のうまさなのだという。