「後妻業」黒川博行著

公開日: 更新日:

 91歳になる中瀬耕造は、結婚相談所で知り合った22歳下の小夜子と同居していた。耕造は結婚を望んだが小夜子は籍を入れるのを固辞、内縁の妻に納まった。その耕造が脳梗塞で倒れた。父の危篤の知らせを受け駆けつけた2人の娘は、そこで耕造がほとんどの資産を小夜子に遺贈する公正証書を作成していたことを知る。

 疑念を抱いた姉妹は弁護士に相談。弁護士から小夜子の身辺調査を依頼された興信所の調査員・本多は元大阪府警の刑事。不祥事を起こして警察を辞め、今は探偵稼業で禄を食んでいた。

 本多は、これは小夜子と結婚相談所の経営者・柏木とが手を組んだ「後妻業」だと見抜く。結婚紹介所に登録した資産家の独居老人に小夜子が後添いとして入り込み資産を巻き上げるのだ。小夜子は過去にも何人もの老人から財産を詐取し、いずれも不審な死を遂げていた。カネのにおいを嗅ぎつけた本多は、柏木・小夜子を追い詰めて自らもおこぼれにあずかろうとするが……。

 悪に染まった人間たちの強欲さと非情な現実を秀抜な筆致で描ききった、直木賞受賞第1作。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」