「酔うために地球はぐるぐるまわってる」椎名誠著

公開日: 更新日:

 これまで240冊もの本を書いてきた椎名誠にして、初めての全編酒だけのエッセー集。登場する酒の種類は実に多彩。青トウガラシを入れたトマトジュースで割って飲むテキーラ(メキシコ)。馬の乳を革袋に入れて攪拌してつくる馬乳酒(モンゴル)。蒸したイモを唾液と混ぜ合わせて出来上がる口噛み酒(ニューギニア)。焼酎の中にまだ動いているコブラの心臓を入れて飲むコブラ酒(ベトナム)。ココヤシの花芯から出てくる樹液を自然発酵させたヤシ酒(フィリピン)。さらには、本場スコットランドと日本の山崎・白州で味わうシングルモルト・ウイスキー……。

 しかし、最も熱い思いで語られるのはビール。「ビールがいつも旅人を助けてくれた」という章にはさまざまなシチュエーションでのビールとの出合いが語られる。炎天下で行われた映画撮影の後、宿に帰って飲む冷えたビール。小説を書き上げた徹夜明けのビール。堤防の突堤で釣り竿を垂らしながら飲むビール…。猛暑の中、本書を読むと、きんと冷えたビールが飲みたくなること必定!

(講談社 1400円)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性