「荒神」 宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 蓑吉少年はたった一人、わずかな月明かりを頼りに、深夜の山道を駆け下りていく。寝静まっていた村に、何か恐ろしいことが起きている…。

 時は元禄。東北の山あいで隣り合う長津野藩と香山藩は、戦乱の時代以来、因縁の対立を続けていた。長津野藩では、曽谷弾正なる藩主側近が専横し、恐れられていた。香山藩では、側室が産んだ子が不審死。不穏な気配が漂うなか、香山藩に属する仁谷村が何者かに襲われ、一夜にして壊滅した。家は無残に打ち壊され、焼かれ、村人は一人残らず姿を消していた。どうやら、とんでもない怪物の仕業らしい。

 山で気を失って倒れていた蓑吉は長津野藩領内で助けられた。弾正の妹・朱音、用心棒の宗栄など、心やさしき人々は、傷ついた蓑吉をかくまう。一方の香山藩では、藩主小姓の小日向直弥が、幼なじみの足跡を追って山に分け入った。

 山の民を震え上がらせた怪物は、果たして生き物なのか。それとも、山を汚す人間に怒りの鉄槌を下す神なのか。未曽有の災厄に巻き込まれた人々は、敵対する藩の壁を乗り越え、命がけで怪物に立ち向かう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性