「トワイライト・シャッフル」乙川優三郎著

公開日: 更新日:

 時代小説の分野で、時代小説大賞、山本周五郎賞、直木賞を総なめにし、昨年初めて挑んだ現代小説「脊梁山脈」で大佛次郎賞を受賞した著者による現代小説第2弾。美しい海と砂浜のある房総半島の町を舞台に、思い通りにならない人生を生きる人々を丁寧に描く。

 収録されているのは、元海女の切ない友情をつづった「イン・ザ・ムーンライト」、房総の地に流れ着いた異国人の物語「サヤンテラス」、観光客のためにピアノを弾く孤独なピアニストのささやかな挑戦を描いた「オ・グランジ・アモール」、離婚後にがんを発症した女の再起の物語「ミラー」、一家の大黒柱として難病の弟を支えてきた姉がヌードモデルのアルバイトをする「ムーンライター」、年に一度だけの逢瀬を繰り返す不倫男女を描いた「サンダルズ・アンド・ビーズ」、交通遺児の境遇で朝から晩まで働き尽くした男が見つけた希望の物語「私のために生まれた町」など計13の短編。

 焦燥や失望、諦観や再起への望みなど、人生の苦味を知る年頃になった大人なら誰もが身に覚えのあるさまざまな感情が、それぞれの物語の中に静かに息づいている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」