「おかげさまで生きる」矢作直樹著

公開日: 更新日:

 東京大学医学部付属病院救急部・集中治療部部長として、多くの人の生死を目撃してきた著者。

 前著ベストセラー「人は死なない」で、死は終わりではなく魂は継続すると説き、本書では、救急医療の最前線で命と向き合う中で見いだした「生かされていることに感謝する大切さ」を説いている。

 人が心肺停止状態になると、後遺症もなく助かる時間の限界が通常10分間。しかし救急の現場では、それ以前に亡くなる人もいれば10分を過ぎても蘇生する人がいて、人知を超える出来事もたびたび起こる。加えて、著者は小学生時の交通事故と若い頃の登山中の2度の滑落で計3回命を落としかけたことがあり、そのときも自分を生かす「大いなる存在」を体感したという。

 この世で生きる者は競技場で動くプレーヤーで、他界した者は観客席で声援を送る応援団という、生者と死者の関係性を表す著者ならではの表現も興味深い。いたずらに死を恐れるのではなく、生あるうちは人生で得るさまざまな経験から学び、「おかげさま」という感謝の姿勢で生を全うすることこそが大切なのではないかと説いている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”