著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「サンリオSF文庫総解説」牧眞司、大森望編

公開日: 更新日:

 現存しない文庫のガイドブックとは素晴らしい。サンリオSF文庫は1978年に創刊されて1987年に休刊。その間刊行されたのは197冊。本書表4の惹句から引けば、「SFといえばスペースファンタジーのことだった時代に、宇宙ともファンタジーともほぼ関係のない先鋭的なラインアップを組み、一部の海外SFマニア/海外文学愛好者の間にセンセーションを巻き起こした」伝説の文庫レーベルである。つまり30年近く前に休刊した叢書なのである。もちろん現在はすべて絶版。新刊書店に行っても売っていない。

 入手するには古本屋を駆けまわらなければならない。そういう叢書のガイドブックにはたして意味はあるのか。そうおっしゃる人もいるかもしれないが、これが読み物として抜群に面白いのだ。

 編集顧問だった山野浩一の回顧インタビューをはじめ、当時の解説者や関係者のエッセーなどがたくさん収められているので、その裏側の話がてんこ盛り。出版に興味のある読者ならたっぷりと楽しめるだろう。私は熱烈なSF愛好者ではないのだが、それでも本書を楽しく読んだのはそういう理由による。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋