著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「桃のひこばえ」梶よう子著

公開日: 更新日:

 御薬園同心水上草介、との副題通り、草花の知識をいかしながら人々の悩みを解きほぐすのんびり屋の同心、水上草介を主人公とするシリーズの第2弾。

 どのくらいのんびりしているかというと、誰かが冗談を言って皆が笑い終えたのちに、一拍置いてから、ひとり噴き出すくらいだから、のんびりというよりも、著しく反応が遅いといったほうがいい。水上なのに水草と言われたときも、同心長屋へ戻り、夕餉を食っている最中に、「もしや芯がなさそうなという意味か」とようやく気がつくほどだから、頼りないというほうが正確かもしれない。

 しかし読めば誰もがこの男を好きになる。それは草花への愛が突出しているからだ。そのケタはずれの愛がのんびり屋に芯を与えている。今回は、しっかり者で堅物の吉沢という見習同心が登場して、水上草介と対比されるのがキモ。

 吉沢は「御薬園同心は私の本意ではありません」と言うのだ。これが武士としての仕事なのかと憤慨するのである。はたして水上草介のケタはずれの愛は、この堅物の固い心を解きほぐすことが出来るだろうか。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?