著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「魔術師の視線」本多孝好著

公開日: 更新日:

 小説巧者は、派手な道具立てを作らずにスリリングな話を紡ぎだす。たとえば本書は、楠瀬薫のもとを14歳の少女礼が訪ねてくるのが発端である。ビデオジャーナリストの薫は3年前に、超能力少女として売り出した礼の嘘を暴露した。結果として礼はスキャンダルの渦中に放り込まれる。そこまでするつもりのなかった楠瀬薫は、騒ぎが一段落してから訪ね、詫びるつもりで「何かあったら電話して」と声をかける。その言葉を覚えていた礼が薫を訪ねてきた。ストーカーに悩まされている、相談する大人がいないと礼は言う。しかし、それは少女の狂言ではないかと薫は考える。

 これが冒頭の挿話で、雑誌記者時代の先輩友紀、礼にインチキを教えた超能力者宮城大悟、突然入閣した政治家の寺内隆宏、薫が所属する事務所の社長塚越などが、この挿話を縫うように登場する。美人教授八木葉子と寺内隆宏の密会を暴露した回想もここに登場する。それが100ページちょっと。全体の3分の1だが、主要な人物も出来事も、ここまででだいたい出そろっている。ここからどんな話を紡ぎだすかは本書を読まれたい。驚くほど色彩感豊かな話が展開するのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 5

    「NHKから国民を守る党」崩壊秒読み…立花孝志党首は服役の公算大、斉藤副党首の唐突離党がダメ押し

  1. 6

    国民民主党でくすぶる「パワハラ問題」めぐり玉木雄一郎代表がブチ切れ! 定例会見での一部始終

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  3. 8

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  4. 9

    長女Cocomiに熱愛発覚…父キムタクがさらに抱える2つの「ちょ、待てよ」リスク

  5. 10

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ