「貧困の倫理学」馬渕浩二著

公開日: 更新日:

 地球上の8人に1人が飢餓に苦しむ今、豊かな先進国に暮らしながら、世界の貧困問題を放置することは倫理的に許されるのか。この問いに取り組む先人たちの思想を紹介しながら、現代の倫理のあり方を提示する思索のための手引書。

 関係者の利益を増大させよという功利主義的な原則を採用する哲学者シンガーは、援助によって多数の貧困者の利益が増大するゆえに、豊かな国の住人には援助の義務があると説く。功利主義の対極にあるカント倫理学を採用するオニールは、「カント的に正しい世界」にもとづき、困窮した他者に対する援助を正当化する。各理論とそれに対する批判の論点を解説しながら、貧困問題に対する我々の義務について考える。

(平凡社 840円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る