「戦場カメラマン沢田教一の眼」斉藤光政・編集 沢田タカ・協力

公開日: 更新日:

 戦火に追われた母子が胸まで水につかりながら必死の形相で川を渡ろうとしている姿を撮影した一枚の写真。ベトナム戦争の実情を凝縮した「安全への逃避」と題されたこの報道写真で、ジャーナリズムの最高峰ピュリツァー賞を受賞した戦場カメラマン、沢田教一の作品を集大成した写真集である。

 青森県・三沢の米軍基地内にある写真店で働いていた沢田は、プロカメラマンを志し上京。知人の紹介で運よくアメリカの通信社の東京支局に入社するが、1965年、休職して自費でベトナムへと旅立つ。

「安全への逃避」の他にも、ベトコン(南ベトナム解放民族戦線)兵士の遺体を戦果として引きずる米軍の装甲車を撮影した「泥まみれの死」などの代表作をはじめ、ベトコンの疑いをかけられ銃を向けられて命乞いする老婆や、ジャングルでの緊迫した戦いの様子、そして報道陣の中で一番乗りを果たし、海兵隊員すらその激しい肉弾戦に怯え泣き叫んだという古都フエでの攻防戦を撮影した一連の写真など。白黒で伝えられた戦場の現実は、命のやりとりが行われている現場のギリギリとした緊張感に満ちている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲